日向坂46(けやき坂46) 濱岸ひより 評価

日向坂46(けやき坂46)

濱岸ひより(c) 2019 RENI/欅坂46

「約束の卵」

柔軟性を伴った呼吸が作り上げる樽の底が抜けたような想像力と好奇心。まだ15歳の少女。心の揺きがそのまま手足の動きとなって表情がつくられていく。照れ隠しで脇道に逸れる仕草、素直さはユニークに映る。頼りない、未成熟な虚構(もう一つの世界)の中に映し出されるアイドルの目線の先を追うと、センターポジションが憧憬ではなく、約束された場所のように海と空の中間に浮かんでいる。

濱岸ひよりの「無垢」は、日向坂46(けやき坂46)というグループに対して渦巻く、内外の感情に対する一種のトランキライザーとして機能している、とつよく感じる。大仰に云えば、どのような状況下においても、他者と融和してしまう存在。例えば舞台装置の上で河田陽菜と戯れ合い日常の物語を零すような光景。彼女の「無垢」が北川綾巴や一色嶺奈のように、殻を固くして内に籠もるような「俯き」には向かわずに、生田絵梨花がみせた無垢なユーモアへとかたちづくられたのは、彼女の馴致された物理的な柔軟性と、彼女が置かれた(現代アイドルとして)幸運な境遇に因るのだろう。もちろん、この「無垢」という魔法の力は、アイドルとして成熟していく過程で彼女の中から損なわれることが、すでに決定付けられている。それはどのようなカタチをとって訪れるのか。

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年にならなくちゃいけないんだ。なにがあろうとさ。…そしてもちろん、君はじっさいにそいつをくぐり抜けることになる。そのはげしい砂嵐を。形而上的で象徴的な砂嵐を。でも形而上的であり象徴的でありながら、同時にそいつは千の剃刀のようにするどく生身を切り裂くんだ。何人もの人たちがそこで血を流し、君自身もまた血を流すだろう。温かくて赤い血だ。君は両手にその血を受けるだろう。それは君の血であり、ほかの人たちの血でもある。そしてその砂嵐が終わったとき、どうやって自分がそいつをくぐり抜けて生きのびることができたのか、君には理解できないはずだ。…でもひとつだけはっきりしていることがある。その嵐から出てきた君は、そこに足を踏みいれたときの君じゃないっていうことだ。

村上春樹「海辺のカフカ」

アイドルにとって、15歳というのは特別な意味を持つ。おそらく、隔たりの意で、前の歳、後の歳ともっとも隔絶された年齢である。そこを通過してしまったら、もう二度”同じ”人間には戻れない、”暗くてながいトンネル”に遭遇するのが15歳である。未成熟な果実が成熟する過程と瞬間であり、アイデンティティを確立しようと隘路の森に踏み込む瞬間である。だから、切迫している。長編小説の書き出しの一行が決定されるときのように。15歳の彼女が流す血とほかの誰かが流す血が同じである理由は、彼女たちが「グループアイドル」だからである。濱岸ひよりの場合、自身が流す血よりも多くの仲間の血をその両手に受けることになるだろう。それが彼女の血となり、グループの「過去の証」となる。

 

総合評価 65点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 13点 ライブ表現 14点

演劇表現 11点 バラエティ 15点

情動感染 12点

けやき坂46 活動期間2017年~

評価点数の見方