日向坂46(けやき坂46) 濱岸ひより 評価

日向坂46(けやき坂46)

濱岸ひより(C)音楽ナタリー

「約束の卵」

濱岸ひより、平成14年生、日向坂46(けやき坂46) の第二期生。
柔軟性を伴った呼吸から生まれる樽の底が抜けたような想像力と好奇心を持つ個性的な登場人物。まだ15歳の少女。心の揺きがそのまま手足の動きとなって表情がつくられていく。照れかくしでアイドルの物語が脇道に逸れてしまう光景には、少女特有の新鮮な深刻さを覗く。頼りない、未成熟さによって映し出されるアイドルの目線の先を追うと、センターポジションが憧憬などではなく、約束された場所のように架空の世界、その海と空の中間に浮かんでいる。

濱岸ひよりの「無垢」は、日向坂46(けやき坂46)というグループを囲繞する、内外の感情に対する一種のトランキライザーとして機能している、とつよく感じる。たとえば、舞台装置の上で河田陽菜と戯れ合い、日常の物語、その細部をこぼすような光景から、彼女は、どのような状況下においても、自己を譲ることをせずに、他者との融和を達成してしまう存在に映る。彼女の「無垢」が北川綾巴一色嶺奈のように、殻を固くして内に籠もるような「俯き」には向かわずに、生田絵梨花のような「ユーモア」へとかたちづくられたのは、彼女の馴致された物理的な柔軟性と、彼女の置かれた幸運な境遇(グループの居心地の良さや彼女を取り囲む大人の寛容)に因るのだろう。もちろん、この「無垢」という魔法の力は、アイドルとして成熟していく過程で彼女の内から損なわれることがすでに決定付けられている。
この人は、自分の感情を言葉にして他者に伝えることが苦手なようだ。だから思弁的になる。自己の内に発生した語彙をうまく言葉にして表現できないから、豪快に笑って誤魔化すようになる。その姿を観た、寛容な”みんな”も一緒に笑ってくれるから、それが癖になってしまった。結果、どんどん、伝えたい言葉が言葉にして話せなくなる。だから、憂鬱になる。生硬が少しずつ砕け、無垢が損なわれて行く。やがて15歳の少女は、暗いトンネルの入り口の前に立つ。

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年にならなくちゃいけないんだ。なにがあろうとさ。…そしてもちろん、君はじっさいにそいつをくぐり抜けることになる。そのはげしい砂嵐を。形而上的で象徴的な砂嵐を。でも形而上的であり象徴的でありながら、同時にそいつは千の剃刀のようにするどく生身を切り裂くんだ。何人もの人たちがそこで血を流し、君自身もまた血を流すだろう。温かくて赤い血だ。君は両手にその血を受けるだろう。それは君の血であり、ほかの人たちの血でもある。そしてその砂嵐が終わったとき、どうやって自分がそいつをくぐり抜けて生きのびることができたのか、君には理解できないはずだ。…でもひとつだけはっきりしていることがある。その嵐から出てきた君は、そこに足を踏みいれたときの君じゃないっていうことだ。

村上春樹「海辺のカフカ」

アイドルを演じる少女にとって”15歳”というのは特別な意味を持つ。おそらく、前の歳、後の歳ともっとも隔絶された年齢である。そこを通過してしまったら、もう二度”同じ”人間には戻れない、”暗くてながいトンネル”に遭遇するのが15歳である。そのトンネルの中では、自己の内に抱いた一番大切だと想う感情を他者に伝えることがどうしても叶わない。つまり未成熟な果実が大事なものを喪失し、成熟へと至る過程であり、アイドルを演じる少女がアイデンティティを確立しようと試みる瞬間である。だから、切迫している。長編小説の書き出しの一行が決定されるときのようにスリリングな局面。15歳の彼女が流す血とほかの誰かが流す血が同じである理由は、彼女たちが「グループアイドル」だからである。濱岸ひよりの場合、自身が流す血よりも多くの仲間の血をその両手に受けることになるだろう。それが彼女の血となり、彼女はグループの「過去の証」となる。

 

総合評価 52点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 11点 ライブ表現 13点

演劇表現 11点 バラエティ 10点

情動感染 7点

けやき坂46 活動期間2017年~

 

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