AKB48 福岡聖菜 評価

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「ディスタンス」


松井玲奈が福岡聖菜に初めて遭遇したときの、彼女の表情は今でもハッキリと覚えている。一瞬の沈黙の理由は、共時性がノスタルジーを運んで松井の体内を駆けめぐった証拠だろう。心に思い浮かべても崩れることのない福岡聖菜の姿形が、それを後押しする…。それは、邂逅と呼べる。松井玲奈にとっては喪失との邂逅であり、福岡聖菜にとっては自身の物語に転換を知らせる場面との邂逅である。その出逢いから福岡聖菜が表題曲のメンバーに選抜されるまでに三年の歳月を要した、という点を、どう評価すべきだろうか。デビュー六年目にして初選抜入りを果たす、これは、物語としては質と量、ともに現代アイドルの平均を上回る。福岡聖菜の特徴は、自身が描写する物語をファンに共有させるのではなく、ファンを物語の登場人物としてしまう点にある。彼女はファン自身に物語の輪郭を描かせていく。彼女が作り出した虚構(もう一つの別の世界)の扉を開いて入る「最初の部屋」。きっと、その中心には書き物机が置いてあり、ファンはその部屋に出入りする度に、彼女がみせたエピソードを拾い上げ、ひとつひとつ丁寧に書き連ねていくのだろう。とても、時間のかかる作業である。彼女の物語の進行が遅いのは、このような現代的な共同編集にあるのだろうと想像する。そのような作業を通して、無謀だと嘲笑われるような「夢」を具体的な「目標」として吐露すれば世界がそれに呼応し動き出すという事実を、彼女は実感できたようである。それがアイドルとしての矜持を育ませ、自身の色がグループに濃密に反映され、ひとつの象徴になった未来への希望をしっかりと描けている。
しかし、私には、その希望が、隘路への入り口にみえてしまう。

『抑えきれない衝動』では、希望や若さを衝動として表現したが、福岡聖菜自身にとっての衝動とは”継受”であるようだ。『悔いはないからこその悔しさ』(*1)という彼女の科白に内在する背反性は、この倒錯した衝動によって生まれた感情だろう。歴史継承への希求が消失し、まったくあたらしい物語の主人公(例えば、矢作萌夏のような人物)の誕生が望まれる時勢(AKB48)にあって、グループの歴史を継受し、過去の物語を体現するアイドルになろうと試みる姿勢にもアナクロニズム的な倒錯を福岡聖菜から受け取れてしまう。群像劇や血の継承によってグループアイドルの存在理由が満たされてきた事実と歴史を現役アイドルである彼女が正しく認識したことが、現在のアイドルシーンにあっては(彼女が身を置くグループにあっては)、そのイデオロギーが足を引っ張ることになるのだから、悲劇的な皮肉と言えるかもしれない。彼女の容姿が、姿形そのものが、アナクロであるのも、アイロニーと云える。
『ぼくらの勇気 未満都市』において、ヒロインを演じた宝生舞。彼女が演じるユーリは、微生物が死滅し、世界が救済される寸前に死を迎える。ヒロイン性という観点で、希望の地まであと一歩という所で橋が崩れ落ちてしまうような不条理的な儚さを表現しており、その存在理由を満たしている。宝生舞と類似性をもつ福岡聖菜が、宝生舞の演じるヒロインの不条理的な儚さとの共時性をみせてしまうのは、宿命なのかもしれない。

『ロミオ&ジュリエット』において、ジュリエットを演じるにあたって、ロミオの内面を探る必要性を感じ、それを発見するためにロミオを演じる人間の”日常側”を観察したという。この視点の所持に、未曾有な、演劇への資質=可能性を感じるが、一方では、「演技に正解はない、でも正解を求めてしまう」と述べており、ここでもまた、彼女は倒錯をみせてしまうのである。彼女は、役が腑に落ちないまま本番の舞台にたっているのである。だから舞台上のどこに立っていても、憂鬱で警戒的な、思案に暮れた表情をみせてしまう。そして、正解を常に求めるという性向は、正解と”されるもの”に出遭ってしまったとき、それを絶対的な真理とする愚直さを手にしてしまうものである。愚直な前進とは、確実に前へと進んでいるようで、実はそれは錯覚であり、気づけば「隘路の森」の中、まえにもうしろにも選択肢がない状況を作り上げてしまう。彼女のアイドルとしての立ち居振る舞いから”倒錯”を感じてしまうのは、彼女の立っている場所が、すでにその森の中心だからなのかもしれない。そこは、ファンと隔てられた場所である。ある意味では、アイドル福岡聖菜がはじめて、孤立感を抱ける場所なのかもしれない。文芸とは「自分が世界から隔てられていると感じる人間が作り上げる、今ひとつの世界」(*2)と偉人は云う。その、あたらしい距離感、隔たりが、あたらしい物語を創造するのならば、彼女はグループのあり方を群像劇へと回帰させる存在になるだろう。

 

総合評価 61点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 10点

演劇表現 13点 バラエティ 11点

情動感染 12点


引用:(*1)野木原晃一 「週刊東京ウォーカー」

(*2)福田和也 「乃木希典」

AKB48 活動期間 2013年~

評価点数の見方