若手の全貌がだんだん明らかになってきたので、期待度を測ってみる。

「多様性のアイドルたち」
日向坂46の『円周率』のミュージックビデオに描かれた少女たちの円居の表情、乃木坂46の『是非に及ばず』に向けられたファンの野次――楽曲の質が悪くてもそれはアイドルの所為ではない、むしろアイドルは被害者だとするそのファン感情などを眺めていて、現在のアイドルシーンの性質が、より明らかになったと感じた。
アイドルが、社会やら若者やらを否が応でも先取りしてしまう、先取りとは言わなくとも反映してしまうのだとしたら、アイドルシーンの主流である坂道シリーズが序列闘争から身を離すのも当然と言える。とりわけ乃木坂46が顕著で、才能や人気といったものに縛られず、少女一人ひとりの多様性を認め、かつては、ほんの一握りの少女しか立てなかったポジションを進んで与えるという作り手の姿勢は、グループそのものを多様に映している。ついに、センターは特別な場所ではなくなった。よほどの問題がなければ、誰にでも立てる場所になった。アイドルを志す少女にしてみれば、これほど希望に満ちた状況はなく、またこうした希望のあり方ほど現代を克明に映したものはない。アイドルにかかずらうとき、嫌な思いをしたくない、というファン感情が、直にアイドルの像を画している。
それでもなお、水際立つ少女と、そうではない少女が出てくると、私は思う。あるいはそれは、少女を眺める側の内で、ということにすぎず、少女たちはあくまでも横一列に並んでいるのかもしれないが。いずれにしても、私は少女たちの才能、可能性のごときをどうしても読んでしまう。これは、突き詰めると、ある種のナラトロジーへの憧憬と言えるかもしれません。人々が等価であるとうそぶくことは、人々が持っているはずの可能性をなかったことにする暴力にも等しい。登場人物のそれぞれが皆一様にしてキラキラとした魅力にあふれているとしたら、これほど不気味で、人間性の喪失した物語世界はない。もちろん、天使は天使のまま、悪役は悪役のままで固定されてしまう物語も批判されてしかるべきではあるのだけれど。しかしそこには教養がある。古くから、物語の書き手は、世界を把握するために、その空を何らかの物差しで切り刻もうとする、知性の限界に挑んできた。アイドルを、自己の内で物語ろうとする行為は、野蛮ではあるが、それだけに刺激をもたらすと、私は信じている。
乃木坂46
愛宕心響|期待度:★★
『桜橋を教えてくれた』でセンターに立った。一ノ瀬美空と並び、乃木坂46の多様性を代表する、希望的存在。
大越ひなの|期待度:★★★
感情の先走りを意識した、感情を振り切った表現が特徴的。
小津玲奈|期待度:★
休業から明けて、同期とのあいだに生まれた経験の差をどう埋めるのか、注目。
海邉朱莉|期待度:★★★★
昨日と今日で、見え方が大きく変わる。歌の上手ということらしいけれど、歌というよりもアイドルとしての佇まいそのものに玄妙な味わいがあるように思う。
川端晃菜|期待度:★★★★
黄金期の、乃木坂の1期の面影に強い。ただ、それ以上に強く出てくる印象がまだ一つもない。具体的な期待を言えば、表題作のセンターに立つ姿を一度は見てみたい。
鈴木佑捺|期待度:★
これといって印象がない。
瀬戸口心月|期待度:★★★★★★★
静寂を突き破る美貌の持ち主。
長嶋凛桜|期待度:★★★★★★
『命の色』のセンターに選ばれた。そのテーマの真摯さ、人間感情の複雑さ、泥臭さを正面から引き受けているかに見える点は、かなり期待が持てると同時に、その期待は、これまでの乃木坂のメンバーに抱いた期待感のどれとも重ならない、新たな期待感であるように思う。言うまでもなく私は、音楽作品への評価は、アイドルへの評価と等価であるべきだと思っている。眼の前に提示された音楽が傑作ならば、やはりアイドルも傑作なのだと思う。そうでなければ、どうして逆転の光景など望めるだろうか。
増田三莉音|期待度:-
休養中のため除外。
森平麗心|期待度:★★★★★
東洋の静けさと、西洋人的な笑顔の明るさを兼ね備えた、飛びきりに晴れた美の持ち主。
矢田萌華|期待度:★★★★★★★★★
現実離れした透明感や気高さを感じさせるその神秘的な美と、誠実さ、覚悟の潔さを架橋する姿が好印象。『最後に階段を駆け上がったのはいつだ?』の選抜発表の際に見せた彼女の戸惑いの表情に、私は希望を感じてやまない。乃木坂の6期は不作と言われているようだが、この矢田萌華一人でお釣りがくるだろう。
日向坂46
大田美月|期待度:★★★★
同じミュージックビデオでも、作品内で異なった表情を作るのが上手い。笑った表情、さめた表情、どちらが本当の彼女なのか、ファンはドギマギしてしまうんじゃないか。
大野愛実|期待度:★★★★★★★★★★(High)
次代を代表すべきアイドル。
片山紗希|期待度:★★
若手だが、すでにコアなファンを引きつけている。ダンス、演技のいずれも型にはまってしまっている。
蔵盛妃那乃|期待度:★★★★★★
日向坂の5期は演技の上手な少女が揃っているが、そのなかでも特に優れた才を持っている。『円周率』のミュージックビデオの最終盤で映された彼女の表情は、ダンスと演技という関係の事由を超えている。
坂井新奈|期待度:★
いまのところ印象に残らない。
佐藤優羽|期待度:★★★★★★★★
『円周率』でセンターに立った。容貌から作り手にキャラクターを想像・創造させるという点で、西野七瀬、白石麻衣、賀喜遥香などに比肩する輝きを見る。
下田衣珠季|期待度:★★★★★★★
ビジュアル、歌、ダンス、演技、すべて高水準。しかもそれらすべてが個性的でもある。この逸材が、表題作のセンターに立つ姿を一度は眺めてみたい。
高井俐香|期待度:★★★★★
ファンの声価に際立ったアイドル。評判の先行したアイドルだと思ったが、作品ごとに美しさを増している。ファンの眼力の高さをその身を持って証し、私のように眼力のないファンをねじ伏せている。
鶴崎仁香|期待度:★★★★
おぼつかない足取り、怯えた顔つきなど、ともすればアイドルの弱点とみなされてもおかしくない部分を、道具立てに演技に活用して見える点が素晴らしい。
松尾桜|期待度:★★★★★★★★★
口角の引き締まったアイドルという意味では、いそうでいなかったアイドル。
櫻坂46
浅井恋乃未|期待度:★★★★★
最新作で、森田ひかる、山下瞳月と並びフロントに立った。作り手からの高い評価、信頼がうかがえる。
稲熊ひな|期待度:★★★★★
片意地の強さをユーモアに映し出す人物。ビジュアルも良い。
勝又春|期待度:★★
「京都大学」で話題になった。が、いまのところそれしか話題が見当たらない。
佐藤愛桜|期待度:★★★
実力はあるのだろうけれど、いまいちアイドルを演じることのモチーフが見えてこない。
中川智尋|期待度:★★★★★
期待の新人だが、いかんせん音楽作品における存在感に乏しい。
松本和子|期待度:★
現時点では、私には語れる部分がない。
目黒陽色|期待度:★
印象がない。
山川宇衣|期待度:★★★★★★★
ダンスにおける身体動作のすべてがしなやかで、弓をひきしぼるように力強く、個性的で、華麗。若手でこれだけの個性、スタイルの確立を成し遂げている点に驚嘆させられる。
山田桃実|期待度:★★★★★★
デビュー以来、地力を着実に蓄えている。将来性の高いメンバー。
2026/07/06 楠木かなえ

