AKB48 Green Flash 評判記

「いつか観た古いフランス映画」
歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて
作詞家が提出する詩的世界への責任を、ライブステージの上ではなく、映像世界によって果たそうとシーン全体が傾倒していく時代にあって、その基準線と転換線がクロスした地点が「Green Flash」である。あるいは、過去にもおなじような交錯が存在したかもしれない。だが、明確なトレンドを発生させたのはこのグリーンフラッシュがはじめてなのではないか。登場人物を描写するための、めまぐるしい場面展開は人間群像の典型であり、映し出される「風景」がそのまま”なにか”の追体験として鑑賞者の季節の記憶になっていく。グリーンフラッシュを見るとしあわせが手に入るのではなく、グリーンフラッシュそのものをしあわせとして捉えてしまうアイドルの視線を繊細に描出している。つまり、演者の演劇力、表現力への批評展開が容易な楽曲に映る。このアイドル批評への容易さこそ、現在のアイドルシーンの表通りを練り歩く坂道シリーズの成功要因の一つである。AKBグループで制作された「Green Flash」の経験は、映像作品におけるアイドルの物語を日常生活におけるアイドルのアイデンティティへとすり替える、といった構図の成立に一役買い、坂道シリーズに所属するアイドルとそのファンの「成長共有」に活かされることになる。その架け橋となったアイドルこそ、他でもない、乃木坂46からAKB48に兼任した生駒里奈である。
演劇表現で群を抜いているのは松井玲奈だろうか。宮脇咲良の表情も良い。この楽曲で彼女がみせる疾走感を伴う「憂い」こそ、アイドル・宮脇咲良の本来のあり方なのではないか、とおもう。ぎこちない、均一な笑顔だけがファンに活力を与えるのではないという事実を再確認できる。
総合評価 82点
現代のアイドルシーンを象徴する作品
(評価内訳)
楽曲 16点 歌詞 16点
ボーカル 17点 ライブ・映像 17点
情動感染 16点
引用:見出し AKB48 Green Flash
歌唱メンバー:生駒里奈、入山杏奈、柏木由紀、川栄李奈、木﨑ゆりあ、小嶋陽菜、小嶋真子、指原莉乃、島崎遥香、高橋みなみ、松井珠理奈、松井玲奈、宮脇咲良、山本彩、横山由依、渡辺麻友
作詞 : 秋元 康 / 作曲 : Carlos K. / 編曲 : 佐々木 裕