AKB48 ある日 ふいに… 評判記

「入道雲 遠ざかった 夏の終わり」
歌詞について、
書き出しの描写に工夫がある。「入道雲」が歌詞を”覆う”メタファーとして機能している。少女の成長速度と少年の成長速度は異なる。めまぐるしいスピードで変化する少女の肉体的な成長、精神の成長は、それを目の当たりにする少年にしてみれば、少女から拒絶を投げられた、と映るはず。少年が意識する、少女とのスピードの差は、少女を自分とは決定的にちがう個体として認識させる。今作は、そのような”流れ”を、恋のはじまりの経緯として描写している。少年の恋のはじまりやきっかけを言葉で説明するのはむずかしい。それは、焚き火が風に吹かれて消えてしまう音を描写しようと試みるようなものだ。それが発生する瞬間を(あるいは発生していたことを自覚する瞬間を)、作詞家が自身の記憶や、脳裏に焼きついている光景を一枚一枚さかのぼり、写生を試みた、と想わせる詩が書かれている。ソファにしずみ込み、郷愁に浸る作詞家の姿が容易に想像できる。
映像作品について、
歌詞の冒頭に使われた「入道雲」にヒントを得て、「実験」「分析」をテーマに決めたのだとおもう。その「分析」は作詞家が少年の心象を「分析」した行為に重なる。
総合評価 46点
何とか歌になっている作品
(評価内訳)
楽曲 6点 歌詞 15点
ボーカル 6点 ライブ・映像 10点
情動感染 9点
歌唱メンバー:倉野尾成美、小田彩加、竹内彩姫、込山榛香、太野彩香、内木 志、松岡菜摘、一色嶺奈、渋谷凪咲、岡部 麟、鎌田菜月、小田えりな、駒田京伽、太田奈緒、田中菜津美、中村歩加
作詞 : 秋元 康 作曲・編曲 : 藤谷一郎