乃木坂46 届かなくたって… 評判記

「しばらくして君の存在が大きく感じた」
歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、
29枚目シングルのアンダー楽曲。センターは佐藤楓。
恋愛にアイドルの序列闘争を絡め歌っている。良くも悪くも乃木坂46のアンダーソングらしさが出ている。アンダーメンバーが「アンダー」であることを、その現状を、アイドルの視点とファンの視点それぞれに移動しつつ、励ましてみたり慰めてみたりと、これまでどおりの「アンダー」の流れを汲んでいる。
今シングル『Actually…』は”乃木坂らしさ”への問いかけをテーマに置いているようだから、表題作のテーマと一致する点には作品作りに対する作り手の美意識を受け取る。
アンダー楽曲を眺め、見出すべきは、やはり、現在このなかに表題作の「選抜」の水準に達するメンバーがいるのか、という可能性であり、つまり換言すれば、アンダー楽曲とはファンそれぞれの眼力が試される場と云えるだろうか。
『届かなくたって…』のミュージックビデオを鑑賞し、まず大きな可能性を見出すのは林瑠奈、弓木奈於の2名である。イントロからアイドルたちが歌い出すまでのそのわずかな時間だけで他のアイドルと明暗をはっきりと分けており、アイドルとしての存在感、魅力、情動…、アイドルを組み立てる多くの観点において「選抜」の水準に楽々と達しているかにおもわれる。
また、佐藤璃果、このひとも良いとおもった。『価値あるもの』のミュージックビデオでの存在感、ダンス・表情の凛々しさを今作品でも描けており、瑞々しさも相まって大きな可能性を感じさせる。「テクニック」ではなく、ダンス表現の巧みなアイドル、これは例外なく売れるから、彼女も期待できるのではないか。
歌がうまいのに「選抜」に選ばれない、ダンスが上手いのに「選抜」に入らない、と嘆くアイドルは多い。たしかに、そういった嘆きを真実とするアイドルが一人も存在しないとは言わないが、ほとんどの場合、ほんとうは歌もダンスも大してうまくないから「選抜」に入らない、だけである。コネで勝負が決まると考えるならば、そうした綺麗事は大変な勘違いであり、勝負を決めるのはどのような時代でも、どのようなシーンにおいても「才能」にほかならない。勝負に負けたのならば、それは単に、才能がなかった、に過ぎない。才能さえあれば売れる、表題作の「選抜」に入れる、という健全なシーンが眼の前に拡がっているならば、これ以上の希望はないだろうし、『ブランコ』以降、乃木坂46のアンダーソングの多くがそのような励まし、鼓舞を歌ってきた。
現在の林瑠奈、弓木奈於、佐藤璃果はこの”らしさ”に合致しているように見える。
総合評価 57点
聴く価値がある作品
(評価内訳)
楽曲 12点 歌詞 11点
ボーカル 13点 ライブ・映像 12点
情動感染 9点
引用:見出し、届かなくたって…/秋元康
歌唱メンバー:伊藤理々杏、金川紗耶、北川悠理、黒見明香、阪口珠美、佐藤楓、佐藤璃果、中村麗乃、林瑠奈、松尾美佑、向井葉月、矢久保美緒、山崎怜奈、弓木奈於、吉田綾乃クリスティー、和田まあや
作詞:秋元康 作曲:外山大輔 編曲:外山大輔