乃木坂46 Against 評価

乃木坂46, 楽曲

乃木坂46 『Against』/Sony Music Entertainment /youtube.com

 

「孤独にならなきゃいけない」

「そこに示されているのは、簡単には抜け出すことのできない世界だ。同じところをいつまでもぐるぐると回り続ける世界だ。そういう世界のあり方に、主人公はほとんど嫌気がさしているのだが、出口は簡単には見つからない。あるいは出口はすぐ近くに見えているのだけれど、立ち上がってそこから出ていくだけの気持ちを、どうしても奮い起こすことができない。外に出ていくのは、なんだか億劫だ。また意を決して出ていったところで、そこに彼が見いだすものは、こことほとんど変わりのない世界かもしれない。そこではやはり、ものごとがぐるぐると同じところを回り続けているかもしれない」。それでも主人公は、生駒里奈は外に出ていく決断をした。否応なく立ち現れては全身に降り注ぐ批評空間から出ていった。仲間に希望を見せるために試練を打倒し続けた彼女が遺した最後のメッセージがAgainstである。(*1)

歌詞について、

とても良い。生駒里奈の姿形を想起させるヘミングウェイのような文体。端正で抑制された叙述は観者の情動を引き起こす。自己の可能性の幅を押し広げる、というアイドルの命題をしっかりと丁寧に書けている。楽曲とのバランス感覚にも優れている。

映像作品について、

演者の頭のなかでイメージした映像を実現できた、という到達感によって、ファンのみならず、アイドル自身にとっても贅沢な作品に仕上がった。木から落ちる木の葉のひらひらと舞う光景。これこそがアイドルの体現すべき「美」、つまり「儚さ」である。「制服のマネキン」で構築した新たな世界、そこにある新しい壁を壊すことに成功している。しかもその瞬間をファンにリアルタイムで届けることができた、という一点のみでも、この作品は文学として成立している、と云えるだろう。なによりも、「Against」が耽美で贅沢と感じるのは、生駒里奈が発する同業者へのメッセージ性のたかさにある。シーンの最前線を走る、トップアイドルと呼ばれるごく僅かな者たちにのみ理解されるメッセージ。たとえば、村山彩希のような同業者の情動を引き起こし、やがてそれをファンに感染させる存在。そこにある共感は、共闘などという甘えを作らない。つまり、生駒里奈は、スクロールする映像世界を通じて、ブッキッシュな歌詞が作る詩的世界のしきたり通りには容易く行動できないと嘆き、のたうつグループアイドルの現実的な苦悩を表現しようと試みているのだ。

 

総合評価 76点

現在のアイドル楽曲として優れた作品

(評価内訳)

楽曲 14点 歌詞 16点

ボーカル 14点 ライブ・映像 17点

情動感染 15点

歌唱メンバー:秋元真夏、生田絵梨花、生駒里奈、井上小百合、衛藤美彩、川後陽菜、齋藤飛鳥、斎藤ちはる、斉藤優里、桜井玲香、白石麻衣、高山一実、中田花奈、西野七瀬、能條愛未、樋口日奈、星野みなみ、松村沙友理、若月佑美、和田まあや

作詞:秋元康  作曲:丸谷マナブ  編曲:丸谷マナブ

引用:(*1)(村上春樹「意味がなければスイングはない」)

評価点数の見方