NGT48 佐藤杏樹 評判記

NGT48

佐藤杏樹(C)日刊スポーツ

「Viva La Revolution」

佐藤杏樹、平成13年生、NGT48の第一期生。
なんでもできる。多様性抜群で、歌も上手い。演技の資質も並ではない。無邪気でフレンドリーに見えるが、どこか色気もある。自由闊達で、享楽的な雰囲気を持ち込むアイドル。快活に佇み、ハキハキとしている。気が利くし、機転も利く。彼女を眺めていると、広大なものが収斂するような錯覚に陥る。要は、才能がある。しかもそれは彼女がアイドルになったことでひらかれた可能性である。
自分には他の人間にはないなにかがある。けれど、どうやらそれは日常生活のなかで表現する類いのものではないらしい。そのどこにぶつければいいのかわからない余りあるパワーを、グループアイドルという圧迫に満ちた世界に飛び込み、夢に対する活力へと変換した。つまり、できなかったことができるようになった。このガリンペイロの若者のような価値の転倒が描く展開は、アイドル・佐藤杏樹に文句なしの物語性を付与している。こういう人は、なにをやったって成功してしまうものだ。しかも彼女はすでにアイドルを卒業している。
13歳でアイドルへの扉をひらき、18歳でその扉を閉じる。アイドルの物語としては文句なしに感じる。冗長さもなく、バランスが良い。新公演『夢を死なせるわけにいかない』において卒業を発表する、という「佐藤杏樹」の物語の展開、結末に、もしあなたが皮肉を感じるのだとすれば、それは現在のシーンに馴れきってしまった所為だ、と云えるかもしれない。アイドルからの卒業が「夢」の死に感じられてしまうことこそ、令和のシーンに落とし込まれた病弊だと繰り返し問うべきではないか。ほんとうの「夢」を死なせるわけにはいかないからこそ、少女たちはアイドルからの卒業を決心するのだから。佐藤杏樹は、アイドルらしさを演じる「お芝居」ができなくなってしまったのではなく、自らの意志によって日常を演じる「お芝居」に終止符を打つ、その決断を下したに過ぎない。

しかし一方で、現実的な話をすれば、可能性に満ち溢れていた少女が、少女のままアイドルを卒業するとき、その理由はほとんどの場合、アイドルとしての人気の獲得の失敗、つまりは順位闘争への敗北と敗走である。あたらしい夢へのチャレンジと表現すれば聞こえが良いが、本当に、真に前を向いたまま、あたらしい夢に向かって走り出す者はきわめてすくないのが本音だろうか。
佐藤杏樹の場合、『山口真帆暴行被害事件』の話題が未だ過熱するなかでの卒業発表だったため、グループに直撃した絶望に対する個人的な氷解へのスリルに囲繞され、彼女が残したアイドルの物語そのものへの評価がまったく問われずに、事件に絡めた大衆の息が充満するなか、現実の世界へと姿を消している。その後姿にうら悲しさを感じる、というよりも、アイドルの横顔を平板な現実へとすり合わせようとする多くのファンに、またその情況にファン自身が馴れきってしまったことに寂寥を見出すべきだろうか。

 

総合評価 65点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 13点

演劇表現 12点 バラエティ 15点

情動感染 13点

NGT48 活動期間 2015年~2019年

 

STU48 磯貝花音 評判記

「ダークネス」 磯貝花音、平成12年生、STU48の第一期生。 アイドルとしての ...

STU48 藤原あずさ 評判記

「制服の重さ」 藤原あずさ、平成10年生、STU48の第一期生。 18歳でデビュ ...

保護中: 日向坂46 4期生 注目度ランキング :会員限定公開

「グウィディオン・シュトゥルム」 パスワードを入力してください