日向坂46(けやき坂46) 潮紗理菜 評価

日向坂46(けやき坂46)

潮紗理菜 (C) 日向坂46 / フェイスブック

「沈黙した恋人」

潮紗理菜、平成9年生、日向坂46(けやき坂46)の第一期生。
河田陽菜と並び、現代日本女性の風姿、その内奥を、グループアイドルを演じる過程で濃やかに描出する魅力的なアイドル。潮紗理菜の場合、日常を演じる行為によって喪失してしまうものへの問いかけよりも、現代でグループアイドルを演じることになった少女が否応なく遭遇する、悲劇に対する戸惑い、つまり日常生活者が遭遇することのない類の感情を顔の見えない誰かから投げつけられ、沈黙に陥った痛手と苦悩の物語、それをあくまでも甘美に、しかし明徴に訴えかけており、微笑とも憂い顔とも捉えられる表情を見るとつよく希求される。

孤独に絶望して発話を断念してしまうことは簡単かもしれませんが、それはまた弛緩、退廃にほかなりません。その弛緩は容貌にもあらわれて、ぼうっとした、人間というよりは哺乳動物のような雰囲気を醸しだしてしまうのです。イノセントな人の顔が見られたものではない、というのはそういうことです。絶望を前にしても、云うべきことは云う、最終的には伝わらないとしても、知力の限りを尽くして発話するという緊張と果敢さが、容貌に潑剌とした輝きを与えるのですね。と同時に、この輝きを、一層美しくするのが、悪の自意識なのです。

福田和也 / 悪の対話術

潮紗理菜はミステリアスなアイドルだ。アマゾンの奥地に迷い込み、そのまま占い師として原住民族に崇められていそうなアイドルだ。換言すれば、どこか胡散臭い人物。たとえば、きわめて緊密な内情を吐露する際に、ひとつふたつ、自身を守るためのウソを駆使した、と確信させる言葉を彼女は選んでしまう。だから、底の見えない暗さに反し、吐き出す言葉の数々には、どこかもたれ掛かるには躊躇させる安易な企みを覗く。だが、特筆すべきは、彼女の不気味な立ち居振る舞いを目撃しても不快にならず、むしろ好感を抱いてしまう点だろう。聖母と不純が秤に載せられているように見え、アイドルに対して常に逡巡が付きまとうのは、やはり彼女が対話の「断念」を経験し、さらにその巣穴から這い出る「果敢さ」を持つ成熟した女性、「つまり自分は、イノセントで無垢な存在ではない」と「悪の自意識」を発露する人物だからか。グループアイドルとして「したたかな女」というのは王道から逸れる存在と云えるが、彼女の場合、いや、日向坂46というアイドルグループにおいては事情が変わるようだ。日向坂46では、屈託を露出した末に惜しみなく笑顔をみせるアイドルこそ、ファンに尽きない活力を与え得る、といった構図を見事に描いている。
”あなた、騙されているのよ”といった文句に対し、”そんなことはわかっている。彼女も僕が自分のウソに気づいていることを知っている。それをわかった上で僕と彼女は同じ場所で踊り続けているんだ”、と云って退ける。このような稚気がやすやすと成立してしまうのは、欅坂46(けやき坂46)と日向坂46のふたつの家郷を背負うことになった少女たちがそれぞれ獲得する得物、それが潮紗理菜の場合、「悪の対話術」だったためだろう。彼女が仲間だけでなく、ファンに向けて「知力の限りを尽くして」誠実であたたかい言葉を投げかけられるのは、またそれが芝居じみていて胡散臭いと揶揄を買ってもけして不快に映らず、アイドルの姿形が損なわれないのは、「孤独に絶望」し、沈黙をした末に握りしめたアイドルのアイデンティティが、きわめて会話に意識的な人物のみがみせる「悪の対話術」だったからだ。(*1)

また、グループアイドルのおもしろさとは、このような凡庸な話題を、生まれ持った特別な資質の発揮によって軽々と破断するスリリングにある。仮に、潮紗理菜が後天的にそなえた資質を悪の対話術とするのならば、彼女が先天的に背負う才能、それは”声音”である。
才能とは、きわめて理不尽な存在によってあたえられる輝きだ。ゆえに、努力やポテンシャルといった話題では手の届かない憧れになる。もちろん、”声音”も他者を魅了してやまない天分のひとつだ。
「沈黙した恋人よ」「イマニミテイロ」のボーカル演技でもっとも魅力的だったのは潮紗理菜だ。円盤に保存された歌声のなかでは、潮紗理菜、彼女の作るヴォイスが”もっとも優れている”と感じる。彼女の”声”には大雨の夜に家の中に迷い込んだ雨蛙のような悲哀がある。同時に、揺り籠で安らいでいるような、子守歌を聴いているような救済も届けてくれる。恋愛映画を観たあと、道玄坂のレストランで出されたデザートをつつく恋人、彼女に映画の感想を話しているとき、不意に、その映画を以前にどこかで違う誰かと観たことがあった事実を、悲愛を思い出す。記憶のなかに鮮明に刻まれはしないけれど、出逢うたびに新鮮に映る、潮紗理菜の歌声にはそんな魔力がある。

 

総合評価 67点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 13点 ライブ表現 16点

演劇表現 11点 バラエティ 13点

情動感染 14点

けやき坂46 活動期間 2016年~

引用:(*1) 福田和也 / 悪の対話術

 

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