AKB48 本間麻衣 評価

AKB48

本間麻衣 (C)AKS/755,AKB48 研究生 本間麻衣のトーク

「ノスタルジア」

まさしく大器であり、隔絶や遊離を余儀なくされた次世代アイドルのホープである。厭世の凭れ、斜陽の渦に飲み込まれて行く筐体の自浄が本間麻衣のアイドルとしてのアドヴァンテージだろう。清爽で端正な風貌と繊細な好奇心によって、置かれる科白に落ち着いた説得力があり、”レット・イット・ビー”への実践意欲と羨望の所持は、直向きさとユニークの混載につながり、生田絵梨花のイノセンスが作った探究心のあるユーモアを再現する。生硬が砕け散ろうとするモラトリアム特有の成長過程を露出しており、切迫が日常へ溶け込み、これから途轍もないことがはじまる、という胎動の手触りが確かにある。彼女の前に提出される”胎動”が過褒やクリシェと対峙しないのは、本間麻衣の破顔が作る物語性にアイドルの伝統が内在するからだろう。彼女の笑顔は進化やハイブリッドという範疇になく、雲井浪子の系譜に連なる小嶋真子の笑顔と共時しており、空中に漂ったままの記憶と痕跡の吸収、邂逅が待ち望まれる。

オーバーラン? 予想全部超えて
段階を踏まえてなんてルールほっぽって
なんだってかんだって巻き込んでいっちゃうね
体験談 経験値あんま意味ないよね
いつも NEW GAME 始めるみたいで
「C’est la vie…」 言い得て妙だね!

clammbon / Lush Life!

第十六期生は家郷(前田敦子)とは無縁の世代であるが、ハーベストムーンを通過した先で集合した19名の不揃いと未完、失望感の立ち現れは、アイドルシーンの趨勢によって略奪された旺盛に対する鑑賞者の感傷を無視するならば、不完全な群像劇を描いた第一期生の胎動とかさなり、皮肉にも、AKB48がカフェテーブルの上で物語を書いた頃の、「段階を踏まえてなんてルール」を「ほっぽって」、シーンの体験や経験の振りかざしと正面から闘った頃の、立ち上げ当時のグループのコンセプトに回帰した、と云え、原典を背負って歩くあたらしい物語、あたらしい系譜の誕生を期待させる。本間麻衣はその群像の渦のなか、末端的登場人物としての役を演じながら、「体験談」や「経験値」に縋らない主人公を描くアイドルである。

本間麻衣の八重歯はアイドルの概念としてノスタルジーの徴になるが、筐体単位の回帰をなぞるのではなく、よりオーソドックスな歓呼に迎えられる。アイドルに尽きない関心を抱く人間を受け入れ、限定した虚構を作る姿勢への予兆は、シーンの狭さにより”考え尽くす”が達成され、選択ではなく遭遇によって”愛おしい”の対象(アイドル)が決められ、しかしそれを深刻に傷つけようとする幼稚な逆走や狂騒の再来を予感する。シーンの縮小ですら、猶予期間の終わりを告げる鐘の音とし、隘路の壁を貫き、広大な空白が埋められていく光景にすり替えてしまう点は、グループの未来への展望を見い出すうえで、村山彩希に次ぐ偶像と云える。

卒業への予感(クリティーク)を常に浴びつづける人物だが、真っ白なシーツに包まれて消失するかもしれないという心の揺れ、防ぎようのない風を感じたことは一度もない。
ダンスパフォーマンスに追随する表現力の拙さ、「重心も反応もおぼつかな」い踊り、姿形、線の細さが徒労の繰り返しを反故する緊張感の欠如と重なり、貧弱に映るが、それを暗黙化せずに、屈託や偏執、メランコリックに傾倒せずに、「C’est la vie」と呟くような達観があり、精悍と怜悧をアイドルの日常演技として構成し、傷つきやすさを束縛しようとする立ち居振る舞い、”機嫌の良さ”を見失わない仕草
をみせるため、アイドルシーンを生き抜く強さと根拠を投げ付けられる。アイドルと成った事実を奇跡との遭遇と実感し、歓び、感謝する本間麻衣の姿形は、発見と成長共有の要件を充たしている、と評価できる。

本間麻衣はモノローグを仮装した対話を好むアイドルであり、自己が抱く感性や視野の独自性と独立を”倒錯”として錯覚しながら展開する即興劇には、豊かな感情の風圧があり、目が離せない。彼女は本当に嬉しい時に”本当”に笑うから、ファンもそれをみて本当に笑う。語彙と想像力のバランスが不安定で、思弁による問いを他者と共有する際の悪戦苦闘は、『質問をしても欲しい答えが返ってこないの』と悩むパリの女学生のような葛藤に映るが、彼女の抱える”問い”や”美”がもたらすものは、絵画への鑑賞者的な視点だけではなく、予言と見間違う文学(人間の本質を突く感性)の露出であり、ファンは避けられない共存や共鳴が手元に舞い降りていることに気付かされる。センテンスのおわりに唐突に置かれる間が、進行するドラマツルギーを自覚したために招いた躊躇ならば、語りの展開作りに意識的な人物と云え、盲信的ではあるが、演劇に対する可能性を身勝手に描かせる。このような没入は観者の情動支配につながり、批評空間で時代の虜に陥り、判断力を眩暈させる。情動の魔法が解け、覚醒が不意に訪れると、彼女の”純朴”を再認知すると、これまでに読み、描いた偶像の堆積が崩れ、振り出しに戻って落胆するが、すぐにまた幻想を再構築したくなる欲求への希求力が本間麻衣というアイドルにはある。おそらく、そのループ=”寝ても覚めても”こそ、本物の、緑豊かなノスタルジアなのだろう。
胎動(資質)の観点で、AKBグループにおいて本間麻衣を凌ぐ人物を見つけることはできない。本間麻衣は、AKB48の救世主や切り札といった特効薬的な英雄ではなく、グループの通史そのものを次の時代に移動させる、「NEW GAME」の開始を告げる革命の本命と云える。

 

総合評価 72点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 17点 ライブ表現 8点

演劇表現 15点 バラエティ 16点

情動感染 16点

AKB48 活動期間 2016年~

引用:「」clammbon / Lush Life!

評価点数の見方