僕が見たかった青空 青空について考える 評判記
「青空について考える」
楽曲、歌詞、ミュージックビデオについて、
メジャーデビュー作品。センターに選ばれたのは八木仁愛。
グループ名に因んだタイトルが付され、そのとおり「青空」を前に夢や希望を見出し、歌っている。
青空について考える、と言っても、それは作詞家・秋元康が、自身に課したテーマとしてのタイトル、ではないようだ。歌詞を読めばわかるとおり、あくまでも考えるのはアイドルを演じる少女であるべきだ、という姿勢に一貫している。大人になってから青春を振り返ると、後悔するなにかを必ず見つけ出してしまう。それがどういったものなのか、大人になりつつある少女たちにヒントを出す。秋元康らしさ全開である。
とはいえ、鑑賞への希求があるとすれば、この秋元康の歌詞くらいなもので、楽曲、映像作品、またそれに付随するアイドルの表現のいずれもメジャーデビュー楽曲としては不満が残る。
デビュー作品ということで、当然、青写真を描き、入念にアイデアを練り制作に挑んだはずだが、音楽、映像、共に類型的であり、最後まで鑑賞するにはなかなかの忍耐を求められる。たとえばミュージックビデオ。冒頭のダンスシーンには作り手の熱量と意気込みを感じ取ることが可能だが、中盤以降は、視点が定まっておらず、なにをやりたいのか、いまいち見えてこない。構図が散漫で、どうしても物足りないという印象を抱いてしまう。アイドルに対してせっかく抱いた関心が、凡庸な音楽・映像によって削がれてしまう。歌詞を追いかけ読むようにして音楽に触れれば、それなりの感興があることにはあるのだが。
グループ名、また今作品のタイトルを眺め、予感・期待するのは、作詞家の散文にたいする憧憬が雑多な夢を抱える少女たち=グループアイドルを通し、より具体的に、ひとつの連なりをもった物語=小説へと結実する光景にあるが、その書き出しの一行としては、肩透かしを食らった感を否めない。音楽のなかで「散文」を叶えるには、やはり、まず音楽に並ならぬ魅力が宿っていなければならない。
歌唱メンバー:青木宙帆、秋田莉杏、安納蒼衣、伊藤ゆず、今井優希、岩本理瑚、金澤亜美、木下藍、工藤唯愛、塩釜菜那、杉浦英恋、須永心海、西森杏弥、萩原心花、長谷川稀未、早崎すずき、宮腰友里亜、持永真奈、八重樫美伊咲、八木仁愛、柳堀花怜、山口結杏、吉本此那
作詞:秋元康 作曲:松尾一真 編曲:ツタナオヒコ