グループアイドルソング ランキング 2021
「2021年アイドル楽曲ランキング」
2021年をふり返ると、アイドルシーンは穏やかに、しかし確かな世代交代を進めたように思う。エースの卒業によって生じた穴をその場しのぎに埋める、日替わりセンターを作りつづけてきたこれまでのシーンの様相とは打って変わり、撒いた星屑のように輝く少女たちがそのとおりに評価され、主役の座についた。豊かな才能をそなえた少女の横顔にしっかりとスポットライトが当てられる、健全なシーンが育ちつつある、と云えるだろう。もう「コロナ」以前の日常には戻れないだろうという厭世観のなかで、「現在」に希望を見出すしかない、あたえられた境遇のなかで自分に何ができるのか、と問う、あるいは、問われる、そんな社会にあってアイドルはどのように活力を振り撒けるのか、そのアンサーとして立ち上がる若手アイドルたちの横顔は、たしかに希望に満ちている。
さて、アイドルソングの順位付けを試みるにあたっては、2019年版、2020年版のランキングと同様に、筆者が愛用するミュージックプレイヤーに記録された、各アイドルソングの再生回数に重きを置いた。対象とする楽曲は、AKB48、SKE48、NMB48、HKT48、NGT48、STU48、乃木坂46、櫻坂46、日向坂46の9つのアイドルグループから発売された計100曲(活動休止が決まった吉本坂46には当然、新作の発表がなかった)。
また、ミュージックプレイヤーの再生回数を見る、と言っても、CDの発売日の都合上、再生回数だけではフェアにはかれない部分がどうしてもでてくる。よって再生回数をそのまま分析的に捉え順位へと当てはめるような真似はしていない。再生回数を見る面白さとは、熱弁をふるい評価した楽曲よりも、日常生活のなかで無意識の内に再生ボタンを押しつづけた楽曲の存在が数字としてはっきりと出てくる、という点にあるのだとおもう。
つまり今回も「この楽曲は季節の記憶となり得るか」という視点、姿勢を崩さずに批評を作った。5年後、10年後、2021年の「現在」を振り返る際の、そのきっかけになり得るのか、この点をもっとも重要視した。順位付けするにあたり、対象の楽曲をあらためて、もう一度聴き返した。ミュージックビデオがあるならば、それにも目を通し、場合によっては批評の根幹にした。
グループアイドルソングランキング 100位~91位
100位 選ばれし者たち / NMB48
アイドルに強い演技要求がされておらず、無内容。タイトルも安易。
99位 HAKATA吸血鬼 / HKT48
遊び心と無恥をないまぜにしたような詞。
98位 僕らのトチオンガー / NGT48
ご当地ヒーロー『炎の天狐 トチオンガーセブン』の挿入歌。
97位 僕はこの海を眺めてる / STU48
「海」に拘りすぎ。
96位 世界のスーパーヒーロー / SKE48
『強き者よ』を想起させる詩情だが、肝心のアイドルの表情が画一している。
95位 落とし穴 / NMB48
タイトルは良い。センターで踊る梅山恋和にも強い魅力がある。楽曲には希求されるところが一つもない。
94位 あなたからの卒業 / 乃木坂46
新内眞衣の卒業ソング。アイドルの日常・魅力が消却されている。
93位 それが愛なのね / 櫻坂46
これといって語るところなし。
92位 On my way / 櫻坂46
厚顔無恥と云うべきか、無頓着と呼ぶべきか。
91位 恋落ちフラグ / SKE48
松井珠理奈のラストセンター曲として見れば、構成に疵があり、拍子抜けする。アイドルのコンディションにも目に余るところがある。どこかアイドルが混乱しているように見える。
グループアイドルソングランキング 90位~81位
90位 シンデレラなんていない / HKT48
作詞家が、詩情を捨てようと躍起になっている。
89位 SNS WORLD / HKT48
作詞家が、「SNS」を勉強しようと鼻息を荒くしている。
88位 Wilderness world / 乃木坂46
オンラインゲーム『荒野行動』コラボソング。アイデアに乏しい。
87位 やさしいだけなら / 乃木坂46
最初からさいごまで、とにかく退屈。バラードにしては容易に聴き減りする。
86位 美しきNervous / 櫻坂46
淡泊。
85位 アディショナルタイム / 日向坂46
日常の機微を描こうとしたのだろう。しかし表現があまりにも稚拙すぎる。
84位 ラーメンワンダーランド / NGT48
「遊び」の延長として見るならば、それなりに楽しめる。
83位 気にならない孤独 / STU48
池田裕楽のソロ楽曲。歌を唄うことに熱心になるあまり、肝心のアイドルがなにを伝えたいのか、見えてこない。眼の前に立つアイドルのおおまかな輪郭をつかむことすらできない。歌が上手い、ただそれだけである。今日のアイドルのレゾンデートルを問う、という意味では、タイトルはよく考えられている。
82位 夢をガラス瓶の中に / STU48
「海」に拘りすぎた所為か、『波が伝えるもの』と詩情が酷似している。筋立てに工夫がなく、アイデアの枯渇をさらしている。
81位 Change Your World / SKE48
踊りが良いアイドルグループ、というイメージだったが、この楽曲に限って云えば、まったく踊れていない。
グループアイドルソングランキング 80位~71位
80位 Memories ~いつの日か会えるまで~ / SKE48
松井珠理奈の卒業ソング。アイドル本人が作詞に挑戦した。
79位 あっけない粉雪 / HKT48
説明的に過ぎ、情感に乏しい詩だが、情景を思い浮かべることは可能。
78位 Out of the blue / 乃木坂46
『Isee…』のヒット、その余韻に縛られた典型的な自己模倣品。
77位 ブラックジャガー / AKB48
B面、というよりは、A面の制作過程における失敗作に見える。しかしそのA面である『根も葉もRumor』も失敗作であるから、もはや目も当てられない。
76位 西高東低 / AKB48
チーム8の新作。工夫が足りない。観客の前で楽曲を紹介するアイドルが気の毒に思えてしまうほど、歌詞に芸が無い。
75位 マシンガンレイン / 乃木坂46
作り手の、狭い想像力が限界に達している。音楽的魅力を欠く。
74位 UFO募集中 / HKT48
それなりに遊び心がある。
73位 踵を鳴らせ! / NGT48
「青春」に向けた応援歌。けれどこれは「アイドル」を励ましているだけにしかみえない。
72位 櫻坂の詩 / 櫻坂46
お決まりの「詩」シリーズ。
71位 もしも心が透明なら / 乃木坂46
アーティスティックに振る舞っているが、肝心の”伝えたいこと”がどこにも見当たらない。
グループアイドルソングランキング 70位~61位
70位 何度でも何度でも / 日向坂46
「青」への偏執っぷりに辟易する。
69位 思いがけないダブルレインボー / 日向坂46
虹に希望を見出すという紋切り型の設定はともかく、メロディがいまいち壺にはまらない。
68位 世界にはThank you!が溢れている / 日向坂46
2期生楽曲。世界はThank you!で溢れているらしい。
67位 膨大な夢に押し潰されて / 日向坂46
夢見る若者特有の過剰さ、狭い視野を歌っている。タイトルに期待すると裏切られる。
66位 この道 / HKT48
森保まどかの卒業ソング。可もなく不可もなく、語るところ少なし。
65位 君がいなくなる12月 / AKB48
横山由依の卒業ソング。詩情、映像作品、共に図式に囚われている。「12月」というところに辛うじてアイドルへの写実があるようにおもわれる。
64位 自転車のベルで伝えたい / SKE48
江籠裕奈のソロ楽曲。いつの間にか20歳を超えていた、閑却されたスーパーアイドルの、遅すぎたソロ。
63位 私の色 / 乃木坂46
高山一実の卒業ソング。これもまた例にもれず類型的な卒業作品だが、ミュージックビデオの設定、友人の結婚式の最中に自身のメモリーを歌うという自己肥大したアイドルの横顔には、写実の痕が見られる。
62位 青いレモンの季節 / NMB48
標準的なアイドルポップス。
61位 思い出にするにはまだ早すぎる / HKT48
宮脇咲良の卒業ソング。これも類型に囚われている。歌詞に関しては、アイドルを演じる少女の内面に触れることがそれなりにできている。
グループアイドルソングランキング 60位~51位
60位 大人たちには指示されない / 乃木坂46
今日では一方の主流ともなった「大人への反動」を歌った。だが『サイレントマジョリティー』を下敷きにした啓蒙=欅坂46の繰り返しとみなされ、グループのファンにあまりウケなかった。
59位 どうする?どうする?どうする? / 日向坂46
1期生楽曲。普通が一番大事だ、という至って普通のことを歌っている。作品の仕上がりも、ごく普通。
58位 酸っぱい自己嫌悪 / 日向坂46
アイドルになる少女の前日譚を、「僕」の悔悟という体裁のもと、綴っている。
57位 そして僕は僕じゃなくなる / STU48
「衝動」を描きつつ、しかし今自分の居る場所からは絶対に移動を試みないという、作詞家・秋元康の鉄壁の備えを存分に味わえる楽曲。タイトルをみずから裏切っている。
56位 サングラスデイズ / STU48
季節の移り変わり、その日常の機微をアイドルの成長に喩え、歌っている。詩情そのものは稚拙だが、アイドルとの通い合いを考えれば、なかなかに生彩。
55位 シダレヤナギ / NMB48
一時代を築いたトップアイドルの最後のセンター楽曲にしてはあまりにもクオリティが低く、落胆させられる。作り手の誰一人として「アイドル」の写実を試みていない。作り手がアイドルを知ろうとしないのならば、もちろん、ファンが知ることもないだろう。アイドルのパフォーマンスには平均を凌ぐ迫力がある。とくに白間美瑠の踊りにはアイドルの内奥と行動力の一致したスリリングさがあり、魅了される。
54位 青空片想い(2021ver.) / SKE48
SKE48のセカンドシングル『青空片想い』を、次世代アイドルを軸に、まったく同じシチュエーションをもって撮りなおした。過去作と比較すれば、アイドルが、やわらかくスマートに見える。
53位 大騒ぎ天国 / AKB48
AKB48の若手アイドルが集合し、思春期の「恋愛」を歌った。久保怜音、千葉恵里、田口愛佳といった次世代を担うべきメンバーのたしかな存在感に触れることが可能。ただ、楽曲、ライブパフォーマンス、どちらも散漫なところがある。とくに中盤からの退屈さは目に余る。
52位 根も葉もRumor / AKB48
1年半ぶりの新作。「会いに行けるアイドル」というコンセプトの破綻を前にして、純AKB48への回帰、という道を選んだ。あるいは、強いられた。グループの岐路を吹き払おうとする意欲作だが、乃木坂46を過剰に意識しすぎたのだろうか、視野が狭く独りよがりである点はともかく、肝心の作品にモチーフがない。
51位 全然 変わらない / HKT48
移動しない「僕」という作詞家・秋元康の特質をそのままタイトルに冠したような楽曲。
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