グループアイドルソング ランキング 2019
グループアイドルソングランキング 50位~41位
50位 Acting tough / NMB48
太田夢莉のソロ。これまでに描いた物語を裏切らない透明感。
49位 制服の重さ / STU48
めずらしく、作詞家・秋元康が自己の達成に酔っている。
48位 今夜はええやん / 吉本坂46
構図そのものは時代錯誤だが、テーマを明確にした点は好ましい。
47位 やさしさが邪魔をする / 日向坂46
凝っているだけにしつこさに気を引かれる。
46位 せ~ので言おうぜ! / SKE48
過去に未来をかさねることで希望を描くが、次世代アイドルをグループの「過去の証」としてのみ扱っている点に、SKE48の暗さを覗く。
45位 2番目のドア / NMB48
胎動とも衝動とも異なる「移動」をテーマにしている。スリリング。
44位 一杯の水 / STU48
どうしても、かなめの「夏」に帰結しないのはドラマチックに過ぎるからか。
43位 好きになれただけで幸せだ / STU48
歌詞があまりにもアイドルに寄り添いすぎている。
42位 意志 / HKT48
アイドルの意志が提示するものとは未来への希望にほかならないが、この楽曲からは、アイドルの願望を覗くことはできても、未来への希望を見出すことは叶わない。
41位 青い檸檬 / STU48
乃木坂46の「空扉」と響き合うような物語。検証の余地あり。
グループアイドルソングランキング 40位~31位
40位 母校へ帰れ! / NMB48
主人公の不在が招く、模索の劇と見ればなかなかに愉しめる。
39位 原点 / STU48
収斂ではなく硬化。タイトルに期待する幅広さを把持しない。
38位 一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない / 日向坂46
上村ひなののソロ。前衛的、思い切りがある。とにかく演りきった。この、次々とおとずれる窮地を凌ぐ、アイドルを演りきる、という物語が上村ひなののアイデンティティとなりつつあるようだ。しかし彼女がハードルを超えれば超えるほど、「上村ひなの」の素顔が遠のいて行くと感じるのは私だけだろうか。
37位 海の色を知っているか? / STU48
壮大。浮遊するアイデア、センテンスをとにかく詰め込んだ、といった印象。しかしこれを聴くなら「瀬戸内の声」を聴いたほうが実りある時間を過ごせる。つまり前に進めていない。
36位 僕の思い込み / 乃木坂46
興味深いタイトル。作曲家お決まりのパターンを前にやや閉口。
35位 現在地 / 吉本坂46
気恥ずかしささえ克服できれば…。
34位 Which is which? / STU48
個々のアイドルにそれぞれ、自身の背負う物語を楽曲のなかに持ち込む行為を許可している。
33位 初恋至上主義 / NMB48
真面目にしっかりとアイドルシーンの病弊を穿っている。
32位 いつだってそばにいる / HKT48
アイドル・指原莉乃のメメント・モリ。なるほど、このような郷愁を表題曲に置かない理由は、そこでつくられる真剣な涙が茶番劇にすり替わるのをふせぐためだったのか、と納得させられる。
31位 必然性 / AKB48
再現性のきわめてひくい虚構。いやしかし豪華だ。
グループアイドルソングランキング 30位~21位
30位 角を曲がる / 欅坂46
平手友梨奈のソロ楽曲であり、映画『響-HIBIKI-』の主題歌。典型的な自己模倣品と切り捨てることを躊躇するのは、揶揄を受け付けない一般論的な防衛力と正論の振りかざしがあるからだろう。自己超克を描いているつもりでまったく描けていない。もちろん、それが狙いなんだ、と言われたら黙って立ち去るほかないのだが。
29位 誰より手を振ろう / HKT48
古ぼけているものの、ポジティブな活力の提供がたしかにある。
28位 My god / 日向坂46
導入が素晴らしく、歌を聴くことによって感情を作るというよりは、今、自身の抱く大切な感情をより鮮明なものにしてくれる。
27位 黒い羊 / 欅坂46
良い。しかしこれだけの力作でありながら、深刻さを致命的に欠如するのは、暗い部屋の中で書く日記というよりも教科書の裏のいたずら書きのようなイノセントと演劇的な絶望に満ち、なおかつ、作り手、演者双方がそれに満足してしまったからか。情景化という一点においてきわめて貧弱な作品に映る。
26位 屋上から叫ぶ / AKB48
言葉の真の意味でAKBグループのオールスター・キャストであり、令和が始まった現在のアイドルシーンの中軸と云える。この構成そのままに表題曲としてリリースする勇敢さを作り手に期待できない状況こそアイドルシーンの病弊と呼べるだろう。
25位 Cage / 日向坂46
弁証法的に個性に結びつく「自由」の獲得と発揮を、現実と仮想を行き交う少女たちを通し正面から描いている。
24位 あの日のSecret Base / SKE48
再聴に値する。
23位 抱きしめてやる / 欅坂46/けやき坂46
グループのアイデンティティが成立をむかえようとする瞬間であり、後日、この楽曲の余韻と日向坂46に塗られたあたらしい”イロ”の対峙はグループを隘路に導いた。
22位 キスの手裏剣 / 乃木坂46
架空の世界の入り口をひらく動機としては文句なしの楽曲。しかもその部屋には何度も出入りしたくなる仕掛けが組まれ、鑑賞者を退屈させない。
21位 STRAY SHEEP(2019-12-25発売) / 吉本坂46
仕事のひとつとして消化する”やらされている感”から脱却し、それぞれが拙くバラバラに、自分なりのアイドルを演じようとする、その一歩目を描けている。成長共有の観点で文句なしの作品と云える。
グループアイドルソングランキング 20位~11位
20位 Am I Loving? / 乃木坂46
古典的アイドルポップスを聴きたいならこの一曲。
19位 こんなに好きになっちゃっていいの? / 日向坂46
小坂菜緒のアイデンティティの確立、その過程を追う。
18位 滑走路 / 乃木坂46
デオドラントでありながら没入感もある。リアリティを忘却した、しかしどこかドブ臭い明澄な世界を構築している。
17位 ときめき草 / 日向坂46
序盤に作った疾走感が中盤にさしかかると途端に息切れする。退屈はさけられないが、楽曲全体を俯瞰すれば良作の範疇。
16位 キツネ / 日向坂46
旧時代と新時代のあいだで悶えるグループの現況を、作り手とアイドルが挟撃したような構図を持つ作品。一枚の板の上で踊るアイドルたちには言いようのない希求がある。
15位 ~Do my best~じゃ意味はない / 乃木坂46
岩本蓮加の魅力を明快に打ち出す。屈託の逆転を描いており、それがアイドルとファンのあいだに浮かぶ活力に対するあり方、向き合い方への疑問を提示している。
14位 FRUSTRATION / SKE48
ミュージックビデオよりもダンスムービーのほうに惹かれる。ある意味ではグループのアイデンティティのかけらをファンに拾わせた作品。見応え、聴き応えあり。
13位 曖昧 / 乃木坂46
ケレンの暴走は松村沙友理を過去の絶望と再会させるが、それに立ち向かうのではなく、むしろ、彼女はそれをあざ笑う。
12位 ドレミソラシド / 日向坂46
あらためて聴くと、真っ青な背景とともにリリース当時の記憶が鮮明に描かれるのだから、おどろく。再聴、再評価に値する楽曲だと確信する。
11位 モニカ、夜明けだ / AKB48
タイトルが良い。センスがある。次世代アイドルの胎動と発光をスタイリッシュに描いたミュージックビデオはきわめて鮮烈。一見の価値あり。
グループアイドルソングランキング 10位~1位
10位 誰かといたい / STU48
鮮やかな憧憬とメイプルを日常の多くの場面に入り込む隙間風のように描いている。それが少女たちの歌声にのって生活に浸透して行く。
9位 路面電車の街 / 乃木坂46
ありきたりな物語だが、郷愁、季節の記憶という観点においてはその普遍性に足を引っ張られることはない。とくに山下美月の歌声は、アイドルポップスというジャンルと響き合い、深く呼応しており、なにがしかの情景を映し出す。カタルシスとの遭遇を叶えてくれる。
8位 風を待つ / STU48
「暗闇」からつづく物語としては物足りないものの、「暗闇」によってグループが握りしめた可能性のすべてを構築し直す様子は滑稽でありながらスリリング。
7位 ジュゴンはジュゴン / NMB48
悪ふざけを、アイドルを演じる少女たちへの覚悟の要求にすり替えるという離れ技を見せている。企みのすべてがうまく機能しており、コケットリーやクールといった形容辞の混載がユニークに結実しているのだから、驚かされる。
6位 夜明けまで強がらなくてもいい / 乃木坂46
「君の名は希望」「何度目の青空か?」の系譜につらなる作品。あたらしい主人公を前に、グループの未来に踏み込むのではなく、グループの通史、過去の達成がむかえる結末への欠落を埋めようとする意欲作。近年ではめずらしく、詩的表現に満ち満ちている。
5位 Sing Out! / 乃木坂46
儚く、生命感に満ち、鮮明に光り輝いてみえる。
4位 ありがちな恋愛 / 乃木坂46
アイドルを演じる少女の視線へ降りた際にうまれる、あたりまえの日常とあたりまえの夢の喪失を、純度の高い情景として音楽に落とし込んだ。
3位 全力グローイングアップ / NMB48
アイドルに対する思い込みが排除されている。あるいは、群像を画くのに”さえぎるもの”が無かったのか、ゆたかな詩情の上を少女たちが活き活きと動きまわっている。奥行きのある、瑞々しい作品。
2位 JOYFUL LOVE / 日向坂46
圧倒的な群像を示すと同時に、光りの向こう側へ消えて行く主人公に対する喪失の手触りは文句なしの郷愁、情動感染を引き起こす。
1位 僕のこと、知ってる? / 乃木坂46
アイドルの成熟化、という、シーンの収斂の話題から逸れない、詩情の洗練がある。アイドルを通し青春を反復することで、誰にとっても逃れがたい記憶・物語を書きつづけてきた作詞家が、今作においては過去ではなく現在に歩くことで未来への希望を描き出している。無感動・無関心といった現代日本人の特徴を「大衆」のなかに見出しつつ、その「大衆」に囲まれた際に暴かれる自我の忘失を記憶喪失者の彷徨という設定のなかで描き出す。若くして著名人となった自己の屈託をトップアイドルになった少女の屈託に重ね合わせることで「自己」を再発見する、成長への希望を歌った、掛け値なしの傑作。
あとがき
ランキングを作る時間のなかで強く感じたことは、グループアイドルを演じる少女の物語とは、その多くが楽曲との融和に左右され、あたえられた詩的世界如何で少女たちの姿形はどのようにでも染まるという事実、その再認識である。であれば当然、作り手の想像力を刺激する原動力をそなえたアイドルは順位闘争の場において有利な立場を築くのだろうし、それは「センター」というかたちで表されるのだろう。
もうひとつ、次世代と呼ばれる少女の多くが、ベテランアイドルが持つ物語の豊穣さをすでに凌駕しているという点。乃木坂46の3期生、4期生は言うまでもなく、SKE48、NMB48と、次の世代を生きる少女たちの多くは、すでにグループの主役となるフェーズに到達している、と強く感じた。
2019/12/09 楠木