乃木坂46 三番目の風 評価

乃木坂46, 楽曲

乃木坂46の第三期生(C)ザ・テレビジョン

「三番目の風」

歌詞、楽曲、ミュージックビデオ、ライブ表現について、

3期生楽曲。センターポジションで踊るのは大園桃子。
3期生のデビュー楽曲に位置づけられ、12名の少女たちの物語、そのプロローグとして文句なしの生彩を放つ。あたらしくグループに加わったアイドルに対するガイド的な役割も十分に果たしており、たとえば、山下美月の姿形からはグループアイドルの描く系譜への魅力をたしかに投げつけられ、久保史緒里の佇まいには乃木坂46のアイデンティティの確立をみる。なによりも、センターに立つ大園桃子の瞳の輝き、そこに描出される鮮烈さは平成のアイドルシーンのなかでも段違いの奇跡に映り、この一点のみにおいても、シーンにとって、ファンにとって未来への胎動を描いた価値のある一曲と云えるだろう。

乃木坂46の第3期生とは、グループに誕生したはじめての子供であり、グループの子供=未来のひかりとしての系譜をつくった世代と扱える。後に誕生する4期生が「過去(西野七瀬、白石麻衣)」に触れた最後の世代であり、次のまったくあたらしい物語を描くひかりならば、3期生はあたらしい希望であると同時に「過去」の集大成、つまり「過去の証」である。だから彼女たちにはある種の暗さのようなものがある。山下美月が象徴するように、影みたいにつきまとって離れない暗示がある。「三番目の風」に書かれた詩が素晴らしいのは、暗示の存在をアイドルへ丁寧に教えている点だろう。
AKB48から連なるグループアイドル史のなかにあって、シーンのもっとも豊穣な時期に収穫された12個の果実。この寵児の幕開けを飾る楽曲の詩情が暗示に満ちている。書き出しの一行目に”鬱蒼とした森”と記し、もっとも境遇に恵まれたアイドルに、「環境に恵まれなくて その不運恨むより チャンスを待とう」と歌わせている。これが茶番に映らずに暗示と機能するのは、やはり、彼女たちの登場を最後に、隆盛をきわめたシーンにかげりが差し、黄金期の終わりを告げる鐘が鳴らされ、確実に衰退へと向かうシーンを前にして、そこを生き抜け、立ち上がり未来をこじ開けろ、と云う作詞家・秋元康の啓蒙と活力があるからだ。なるほど、アイドルとそのファンを子供扱いした詩情だが、たしかに、時代を迎え撃つような平易さ、つまり文学がある。もっとも境遇に恵まれ、明るい未来を約束されたアイドルだと扱われるこの12名の少女たちの物語こそ、類を見ないほどに熾烈であり、過酷を極めるのだ。
アイドルが職業アイドルでありつづけるために努力するといったシーンの収斂、本当の夢を見失ってしまうクライシスのようなものが顕になったとき、シーンの豊穣な時期に収穫された少女たちに向け、ここから先は綺麗事だけではすまされない、君たちがシーンの枠組みに風穴を開け軌道をねじ曲げろ、と啓蒙し暗示を記す作詞家の言葉は文句なしに批評と呼べる水準のフィクションを作っている。

 

総合評価 64点

再聴に値する作品

(評価内訳)

楽曲 13点 歌詞 14点

ボーカル 9点 ライブ・映像 13点

情動感染 15点

歌唱メンバー:伊藤理々杏、岩本蓮加、梅澤美波、大園桃子、久保史緒里、阪口珠美、佐藤楓、中村麗乃、向井葉月、山下美月、吉田綾乃クリスティー、与田祐希

作詞:秋元康 作曲:丸谷マナブ 編曲:丸谷マナブ

 

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