AKB48 軽蔑していた愛情 評判記

「みんなのことが嫌いでした」
君は鳥じゃない。
大地に足をつけて歩いて欲しい。
つらいことがあっても、その先には未来がある。
時はいつだって、記憶の消しゴムだから。
軽蔑していた愛情ミュージックビデオ / AKB48
歌詞について、
アイドルに「自殺」を歌わせる、この所業のなかには、アイドルが現代人の鏡として機能する時代だというつよい自意識の表出があり、使命感のようなものすら投げつける。また後日、この楽曲に遭遇したアイドルファンの多くが欅坂46を想起する、という話題から、文学の観点における詩的世界の構築に成功した、と評価できるかもしれない。
「イジメ」をまえに屈曲する少女たちが、その閉じた世界から脱出しようと足掻く姿形は、楽曲を提示するAKB48のアイドルたちがこれまでの世界から、もっと広い場所に移動しようとする渇望と重なり合い、情動の感染を可能としている。しかし、結局、それは過去からの脱出という光景があたえるであろう感興に甘えた物語でしかなく、登場人物の性格を作る材料のすべてを過去の出来事に頼っている、という”お決まり”の厭世の降り積もりがあり、やはりそこに希望を見ない。希望や未来をあたえる楽曲であるはずだが、存在理由としての「救い」が見えない。本来、希望とは、”記憶の消しゴム”ではなく、現在を切り拓く行為であり、そのアイドルの姿形ではないか、と云ってしまったらあまりにも酷だろうか。
総合評価 55点
聴く価値がある作品
(評価内訳)
楽曲 7点 歌詞 13点
ボーカル 9点 ライブ・映像 13点
情動感染 13点
歌唱メンバー:板野友美、大島麻衣、小嶋陽菜、篠田麻里子、高橋みなみ、中西里菜、前田敦子、峯岸みなみ、秋元才加、大島優子、小野恵令奈、河西智美、小林香菜、佐藤夏希、増田有華、宮澤佐江
作詞:秋元康 作曲:井上ヨシマサ 編曲 :井上ヨシマサ