AKB48 田野優花 評判記

「本音を隠さないアイドル」
「この花瓶はもうこわれてしまって、元どおりにはなりません。かつてわたしの心を支配していた感情も、これと同じことです。そのために、いろいろ血迷ったまねをしましたが、どうかお許しください」
スタンダール/赤と黒
田野優花、平成9年生、AKB48の第十二期生。
言葉にできないほど覇気に満ちた、またそれ以上に才気に満ちたアイドルである。
うわべだけを飾った言葉では容易には笑わない、いくぶん世をすねた、本音を隠さないアイドルだが、裏を返せば、それだけ自身もまた言葉に意識的な、緊張感をもったアイドルだということである。そうした「緊張感」を田野が獲たのは、反抗期という、ある種、若者の青春を象った瞬間を、アイドルの飛翔に役立てることができず、むしろアイドルとしての可能性のすべてを、取り返しのつかない言動の数々によって台無しにしてしまったことで、自暴自棄に陥り、夢に打ち砕かれたその時間のなかで、自分の本性を理解したからである。反抗期と言ったって、普通は、他人にたいしてまで、反抗するものではない。アイドルを演じる少女にしても、ほとんどは、反抗期にあることさえも、隠すように行動するのではないか。しかし田野は違う。田野は、他人にたいしても、またアイドルを演じる時間であろうがなかろうが、隔てなく、反抗し、青春を叩き割った。その点では「青春」をアイドルの物語の中心に据える少女たち、ひきもきらずに立ち込める心の暗雲を払うことが「アイドル」を表現することになる、希望を歌うことになると固く信じる昨今の、生真面目な少女たちからすれば、つねに怒気を孕み笑う田野は言葉どおり異端児に見えることだろう。自信家で、一握りの虚栄心と、巨大な野心をそなえ持つ、言葉を制限しない、感情の豊かな彼女の編み上げるその音楽、歌や踊り、また演劇は、アイドルシーンにあって並はずれて優れたものである。
総合評価 78点
アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物
(評価内訳)
ビジュアル 15点 ライブ表現 16点
演劇表現 17点 バラエティ 17点
情動感染 13点
AKB48 活動期間 2011年~2018年