HKT48 多田愛佳 評判記

AKB48, HKT48

多田愛佳(C)音楽ナタリー

「”らぶたん”と呼ばれ、親しまれる」

多田愛佳、平成6年生、AKB48の第三期生であり、HKT48に完全移籍したメンバーの一人。
そのロリータ・イメージとは裏腹に、日常においてはいくぶん狷介な少女であった点は、アイドルは演じ作られるものだとする解釈に忠実な人だったのかもしれない。あるいは、それは渡辺麻友の影響かもしれないが。
その特徴は、ロリータに向けるファンの情操を高め、なおかつ、その後ろめたさに充満した心を開かさせた手腕に裏付けられている。多田自身が胸にいだいた夢のモチーフと、ファンが多田に向け抱くコンプレックスをステージの上で統一することで姿を現すそのアイドルの顔貌は、威容に満ちていて、これぞ職業アイドルといった風格を示す。
11歳であろうが、22歳であろうが、同期であり同齢でもある渡辺麻友にたいしてライバル心を激しく燃やしていた頃も、まだ見ぬチャンスを求めHKT48に活動の場を変えてからも、スポットライトの下に浮かび上がった彼女は、つねに目の据わったアイドルであり、澄んだ気分のなかで歌い、踊っている。

だが、その「風格」を最も証すものが10年というキャリアの長さである点は、やや皮肉的と言えるかもしれない。メジャーアイドルとして約10年、活動したけれど、芸能の世界を生き抜くための才能をアイドルであるうちに開花させることは叶っていない。歌、ダンス、ビジュアル、多様性など、グループアイドルでありつづける能力には長けているが、それがアイドルシーンの外側にひらかれた世界ではなんら役に立たず、鳴かず飛ばずに終わってしまう点は、AKB出身のアイドルの苦悩の、大きな部分を象っている。それでもまだ、アイドルであるうちに夢への活力を使いきり枯らせてしまう昨今の少女たちに比べれば、女優としての夢を追うことで「アイドル」の価値を高めようとした多田の無謀さには、眺めるものに活力をあたえるだけの魅力があるように思われる。

 

総合評価 60点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 14点

演劇表現 10点 バラエティ 12点

情動感染 12点

AKB48~HKT48 活動期間 2006年~2017年