乃木坂46 サイコキネシスの可能性 評判記

「サイコキネシスの可能性」
歌詞について、
『君の名は希望』のカップリング曲という点、作曲に表題と同じく杉山勝彦が起用された点をふまえたうえで詩を読むと、当然、表題曲と通い合う描写を前にアナザーストーリーの誕生を期待する。だが、今楽曲に記された「僕」の横顔が表題曲の「僕」とまったく変わらないものであるとすぐに気づき、期待は裏切られる。いつまでたってもおなじ場所から移動をしない主人公(今作にいたっては、ついに念力にまで頼ろうとし、悪戦苦闘している)が、「君」をきっかけにして前に向き直ろうとする構図はまさしく『君の名は希望』そのものであり、物語の登場人物が本編とはまったく異なる相貌をみせるというアナザーストーリーの魅力を『サイコキネシスの可能性』はもっていない。つまりは、この感触の無さが教えるのは、今作品は表題曲の詩作にあたって芥箱に放り込まれたアイデア、その再利用にすぎないという感慨である。
アイデアを捨てることが作家になるための王道だ、と云ったのはガルシア・マルケスだが、そのような観点においては、作詞家・秋元康、このひとはアイデアを再利用する機会が多すぎるようにも感じる。面の皮が厚い、ということなのだろうけれど。
総合評価 43点
何とか歌になっている作品
(評価内訳)
楽曲 8点 歌詞 10点
ボーカル 9点 ライブ・映像 9点
情動感染 7点
歌唱メンバー:秋元真夏、伊藤寧々、井上小百合、桜井玲香、中田花奈、永島聖羅、西野七瀬、若月佑美
作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦、小倉しんこう 編曲:京田誠一