乃木坂46 図書室の君へ 評判記

のぎざか, 楽曲

図書室の君へミュージックビデオ(C)乃木坂46

「ページめくり始めた」

「君はいろいろ悔悟の種を抱え込むことになる」ミスタ・ジョンは以前ニックに言った。
「それは人生最高の経験と言っていい。悔悟するかしないかはいつも自分で決められる。とにかく肝腎なのは、そういうものを抱え込むことだ」
「僕、悪いことなんかしたくありません」ニックはそのとき言った。
「私だって君にしてほしくはない」ミスタ・ジョンはそのとき言った。
「だが君は生きていて、いろんなことをしでかすことになるんだ。嘘をついたり、盗んだりするなよ。誰だって嘘をつかなくちゃいけない。でも、この人だけには嘘をつかないっていう人を選びたまえ」
「あなたを選びます」
「いいとも。どんなことがあっても私には嘘をつくなよ、私も君に嘘をつかないから」
「がんばります」ニックはそのとき言った。
「そういうことじゃない」ミスタ・ジョンは言った。「心からそうしなくちゃいけないんだ」
「わかりました」ニックは言った。「あなたには絶対嘘をつきません」

ヘミングウェイ/最後の原野(柴田元幸 訳)

歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、

『4番目の光』につづく”4期生楽曲”。センターポジションには早くもブレイクしつつある掛橋沙耶香が立つ。
アイドルを演じること、演りきることへの覚悟の要求、ヘミングウェイの「最後の原野」のような啓蒙と要求をみせた”3期生楽曲”とは対照的に、『4番目の光』-『図書室の君へ』はアイドルという架空の世界への招待状になっている。アイドルに興味がなかった人間たちがその物語のページをめくり没入していく…、「あたらしい存在」がきわめて明確に意識されている。これは、作詞家から3期生に与えられた役割と、4期生が担う役割がまったく異なることの現れなのだろう。
もっとも対照的に感じるのは、楽曲の演奏通過によって”アイドルとしての姿形”を獲得する3期に対し、4期にはそれが一切ない点だろうか。たとえば『三番目の風』では、大園桃子がセンターに対する宿命を鷲掴みにし、あるいは握りつぶし、強い主人公を描いた。『トキトキメキメキ』では岩本蓮加が、『自分じゃない感じ』では山下美月が、さらには佐藤楓、伊藤理々杏が、それぞれアイデンティティの獲得、提示に成功している。しかし4期生においてはそのような”突出”が起きていない。ファンは、この事態をどう捉えるべきだろうか。あるいは、この主人公の不在を1期的な群像劇の成立と捉えることが可能かもしれない。
「3期には物語性がない」と考えるのは、裏を返せば、彼女たちは1期生から連なる、1期がつくった群像劇の範囲内に収まるからである。だから「彼女には物語がない」と、嘆きがうまれる。一方、4期生にはそのような話題が決定的に降らない。何故なら4期生は西野七瀬(そしておそらく白石麻衣)と交錯した最後の”期”である、という事実と束縛がむしろ1期がつくる群像劇の外側に彼女たちを放り出すからだ。まったくあたらしい物語を書くのは、「過去」と完全に隔てられた存在ではない。「過去」の”終り”に触れた者だけが、次の、まったくあたらしい物語を描ける。第二部と名付けるには、第一部とおなじ地平に立っていなければならない。たとえば、エミール・ゾラの『居酒屋』から『ナナ』への変移=再登場のように。
その意味では今楽曲にはそれなりの趣があり、4期のレゾン・デートルの輪郭に触れることが可能。

 

総合評価 48点

何とか歌になっている作品

(評価内訳)

楽曲 13点 歌詞 8点

ボーカル 6点 ライブ・映像 11点

情動感染 10点

歌唱メンバー:遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香、金川紗耶、北川悠理、柴田柚菜、清宮レイ、田村真佑、筒井あやめ、早川聖来、矢久保美緒

作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦 編曲:若田部誠

 

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