SKE48 大矢真那 評判記

SKE48

大矢真那(C)日刊SPA!

「あなたの王国が私たちにもたらされますように」

ここは見世物の世界
何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら
すべてが本物になる

大矢真那、平成2年生、SKE48の第一期生。
インディヴィジュアル・プロジェクションにアイドルの存在理由の大部分があるならば、そのヌエ的イメージにおいて、大矢真那に勝るアイドルは一人もいないだろう。
このひとの魅力、いや、迫力とは、アイドルとしての存在感そのものが虚構であり、かつその現実のとなりに置かれた虚構を本物の現実にすり替えてしまうような、フィクションを現実生活に強く働きかける一つの真実として、ファンに、あるときはアイドルを演じる少女たちに、共有させてしまうところにある。
たとえばそれは、仮想恋愛としての救済と喪失つまりアモールを高い成熟度をもってファンに体験させた深川麻衣の虚構を包括していたのは言うまでもなく、なによりも、アイドルを卒業した直後にこれまでのアイドル観を裏切るような、転向によってむしろこれまで以上にアイドルを求めさまよい歩くファンを生み出してしまうという虚構を作った向田茉夏と橋本奈々未、日常と非日常の境界線の不分明化に襲われ屈託した松井珠理奈と松村沙友理、彼女たちのストーリー展開を、先回りし抱擁していたかにおもわれる。
ファンがアイドルに自己を投影するとき、往々にして、アイドルもまたファンを見つめ返すものだが、大矢真那の場合、自身の傍に立つ少女を、強く過剰に見つめ返してきた。とくに、大衆に傷めつけられ、ヴァルネラヴルへと倒れ込んだ少女たちの保護者となり、少女たちを世間から遠ざけるように匿う大矢の姿勢には、村上春樹の『1Q84』に登場する、ドメスティックバイオレンスに曝された女性たちを保護し彼女たちを傷つけた人間を非合法的に罰する老婦人の歪んだ正義感や、チャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』に登場する、養女を社会への復讐の道具にするためだけに大金を費やし計ることのできない美貌を持ったしかし人間味の欠如した女性に育て上げる貴婦人の横顔にかさなるような稚気があり、不気味に、しかし、頼もしく映った。アイドルを演じることの、自分ではないもうひとりの自分を作り上げることの傷みを理解してやれるのは、やはり、同じアイドルだけなのだろうし、そうした結びつきは言い様のない、偏向した世界を編み出すことだろう。
アイドルを演じる過程で本来の自分を見失い、傷つき、泣き叫ぶ少女を抱きしめ、勇敢に守る大矢真那。このアイドルの性格・魅力がファンの眼前に打ち出され、なおかつ、大矢に匿われた少女がグループアイドルとして飛翔すれば飛翔するほど、大矢の存在感も比例して大きくなる、という構図には、やはり独特な魅力、グループアイドルにしか作り得ない世界観があるようにおもう。大矢真那がグループアイドルとして並ではないステータス、21枚のシングルに参加し、内表題作の歌唱メンバーに選抜された回数は18回という豪華なキャリアを持つのも、これはもう当然すぎるほどに当然の結果なのだ。
アイドルとファン、ではなく、アイドルとアイドルのとびらを開いたばかりの少女、という構図における大矢真那のキャラクター性は破格であり、アイドルでありながらアイドルの保護者として立ち居振る舞い、ドラマツルギーを満たしていく大矢の物語は、今日のグループアイドルの物語において、類を絶したフィクションに見える。ゆえに、アイドルがアイドルをプロデュースすることが当たり前の出来事になった今日のシーンにおいて、大矢真那の動向には目を瞠るものがある。現役時代から、常におおきな偏愛をもって、夢見る少女たちの内面を見つめ、そこに自分の素顔・本音を見出してきた大矢真那には並ではない眼力が備わっているのではないか、と。
とはいえ、このメーンストリートから大きく逸れた彼女の横顔は、一部のコアなファンを魅了すると同時に、理解の及ばない人物として、デビュー以来、常に大衆から揶揄され、そのとおりに、彼女がグループの主役になることは一度もなかったのだが。

 

総合評価 66点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 13点

演劇表現 13点 バラエティ 13点

情動感染 15点

SKE48 活動期間 2008年~2017年

引用:見出し、赤字  村上春樹「1Q84」

 

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