乃木坂46 矢田萌華 評判記

「ミステリアス・アイドル」
矢田萌華、平成20年生、乃木坂46の第六期生であり、16代目センター。
言葉、行動に頼ることなくそのビジュアルにおいて神秘を体現する希有なアイドルである。もっとも、現実離れした透明感に気高さをあわせたその美に、人としての誠実さ、勝ち気さ、覚悟の潔さを架橋する姿にこそ矢田萌華の本領があり、赤みがかった情熱を紫に融かすその姿は、未来を知らないヘレボルスのように輝いている。
同世代のライバルとして日向坂46の大野愛実が挙げられるが、自分がグループの主役だという内心の確信においては大野に比肩するだけの、曲がらない矜持を有している。大野に比べれば、矢田の美しさとは、吹けば飛んで消えてしまうような一つの季節の煌めきに過ぎないが、それだけにその美は、季節の盛りにある花のように、今この瞬間に最も鮮やかに開いているのである。そこには、今この瞬間を過ぎればもう二度と同じ形では現れない、旬の切実さ、魔法の儚さがある。その儚さは、ミュージックビデオなどの音楽にかかわる映像において最高度に映し出されている。『ビリヤニ』においては、まだまだ自分の魅力がどこにあるのかわからないであろう少女の未知な部分を「ミステリアス」として、音楽を自画像にしている。もちろん、ただ未知であることをミステリアスとは呼ばない。ミステリアスとは、知ろうとしても全貌がつかめない、理性や論理の網をすり抜けていくものを言う。矢田萌華ほどにその余白をじゅうぶんに残したアイドルはなかなか見つからないだろう。たとえば『命の色』における矢田の横顔を眺めれば、その季節の風の美しさが生きることの断片となって、鑑賞者の頬を打つはずだ。美を考えることで生きることを想わせるということ以上に強いアイドルの使命などあるだろうか。この矢田萌華の名前に指を屈することで、薄れつつあった乃木坂46に関する望みをようやく抱くことができるのは、きっと私だけではないだろう。
総合評価 77点
アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物
(評価内訳)
ビジュアル 17点 ライブ表現 14点
演劇表現 14点 バラエティ 16点
情動感染 16点
乃木坂46 活動期間 2025年~


