アイドルの可能性を考える 第五回 乃木坂46の「選抜」を考える 編

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「乃木坂46の「選抜」を考える」

メンバー
楠木:批評家。趣味で「アイドルの値打ち」を執筆中。
OLE:フリーライター。自他ともに認めるアイドル通。
島:音楽雑誌の編集者。
横森:カメラマン。門脇実優菜推し。

楠木:表題曲の「選抜」を考える、これはアイドルファンにとっておそらくもっともワクワクする瞬間、真剣にアイドルそれぞれの物語を読み思考する時間と云えるのではないでしょうか。「アイドルの可能性を考える」と称して座談会の真似事を企画した意図は、ブッキッシュなことをやっているブログ(アイドルの値打ち)の中にポップなカテゴリーを作りたいと考えたからです。ファンでありながら作り手の目線をもって「選抜」を考える、これはポップらしい遊びになるのではないでしょうか。今回は、自作の「選抜」を眺め、「IF」を見いだしつつ、あらためて乃木坂46のメンバーを語っていきたいとおもいます。よろしくお願いします。

「賀喜遥香の連続センター」

楠木:ワクワクしたかったので、相談なしで、事前にそれぞれ「選抜」を用意してもらいました。条件は一つだけ。次シングル(29枚目)で構想され得るメンバー、としました。要するに現時点で卒業が発表されているメンバー以外、ということですね。また、次のシングルの「選抜」を予想するわけではなく、現時点で考える各々の理想のメンバー構成ということになります。島さんは忙しそうだったので、今回は3つの「選抜」を見ていきます。
OLE:こうして並べてみると十人十色という感じではないね。
横森:そうだね。
楠木:混乱するので一つずつ見ていくかたちを取りましょうか。まずは横森作から。

(C)乃木坂46

OLE:5-6-7の18人だね。
横森:真面目に考えたよ。笑われないように。
島:まず気になるのは佐藤璃果ですかね。
OLE:俺もこの子を選んでる。
楠木:注目株ですか?
OLE:若手では注目株だよね。ビジュアルが良い。
横森:新4期生を一人入れたいなと考えたら佐藤璃果になった。
楠木:僕はまだ彼女のことをよく知らないんだよね。あ、法則の子か。
OLE:注目していない、言い換えると、見落としている、というのは多分この子に類似性がないからだよ。引用が効かない。ほかに似てる子がいないから。替えが効かないタイプだね。
楠木:なるほど。だから法則を持ち出して、このひとの魅力を探ろうとしたんですね、映像作家が。
OLE:2列目って「福神」ってことになるよね?金川紗耶を2列目って飛ばしすぎだよ(笑)。
楠木:パフォーマンスで選んでいるんですよこれ、きっと。あ、でもそうすると秋元真夏に矛盾が出てくるな。秋元真夏を下げて早川聖来を上げればバランス良くなるはず。
OLE:いやこれアー写の構図を意識しているでしょ(笑)。
島:言われてみれば(笑)。
横森:いやいや、偶然だよ(笑)。
楠木:田村真佑が外れてるね。
横森:うーん、いまいち魅力がわからない。
楠木:ステータスって表現するとゲームみたいに感じるけど、ステータスを読むと田村真佑は高水準でまとまっているけどね。面白みがないとも言えるけど。
OLE:最初から高レベルでそのあと成長しないキャラ、みたいな雰囲気はあるね。
島:銀のやりを持ったジェイガンですね(笑)。
楠木:でも『全部 夢のまま』のライブパフォーマンスは素晴らしいですよ。成長している。成長するジェイガンですね。
OLE:これ、見れば見るほど現実とすり合わせたくなる構成だな(笑)。
楠木:「IF」がある、しっかりと。ただ、新4期生を抜擢するなら林瑠奈が良いとおもうけどね。まあそもそも新4期生はまだまだ「選抜」の水準ではないかな。パフォーマンスがちょっと酷すぎるよね。
横森:テーマは「賀喜遥香の連続センター」なんだけどね。一回やったら次はお休みね、みたいな空気でしょ最近の乃木坂って。賀喜遥香でしばらく挑戦すべきだよ。

「アンダーに落ちた生田絵梨花」

楠木:次はOLEさんのを見ていきますか。

(C)乃木坂46

OLE:3-7-8の18人ね。
島:やっぱり人数は18人が良いんですか。
OLE:そうだね。20人は多すぎるよね。
楠木:20人ってほんとうにバカらしいですよね。現実の問題に打ち負かされているわけです。美意識が。
横森:新内眞衣とか、高山一実とか、そのへんを外せないから枠を増やしているんでしょ。ダサいね。
楠木:そういう現実的な問題を壊せちゃう人間がアーティストなんだよね。アイドルの作り手ってエンターテインメントとアーティスティックワークのバランス感覚を求められるはずなんだけど、乃木坂の場合はアーティストの部分を映像作家に押し付けているよね。まあでもそれが奏功してヒットしたわけだから、手腕があるって言うしかないのかもしれない。
島:この「選抜」を見てまず気になるのはフロントが全員4期生って点ですね。
OLE:現実のテーマを踏襲しているからね。乃木坂は4期が主流になるタイミングだよね。
島:一方でみなさん中村麗乃を引き上げているんですね。
OLE:我々は「商売」で考える必要がないからね。美意識だけで選べる。なら中村麗乃を外す理由はないよね。
楠木:生田絵梨花がいない……。
島:そういえば、入っていないですね。
OLE:なんか中途半端に見えるんだよね。アイドルが、じゃなくて構成として。センターをやれる実力があるでしょ彼女、もうずっと以前から。でもセンターをやらないよね。こういう子は問題児に映る。なら外していいかなって。センターやれるのにやらないメンバーがいるって、構成として倒錯があるでしょ。
楠木:「選抜」の価値が下がる、ということですね。
OLE:そうそう。
横森:逆じゃないの。センターやれる子がやらないで後ろに控えているってことは層が厚いわけだから、価値は上がるんじゃないの。
楠木:それは違うかな。そういうアイドルがいることで群像に厚みをもつのは間違いないけれど、それじゃ価値はなかなか上がらないよ。グループアイドルにとってセンターというのは、これはなにがあっても絶対に一番まぶしい場所って考えなきゃいけない。そこを目指すって物語がないと、なにもはじまらない。前時代的とかそういう話じゃなくて、古典の話題だね、これは。で、当然、センターになるためにはまず「選抜」に入らないといけない。だから「選抜」になるためにみんながんばるわけだね。でもセンターに価値がなくなったらどうだろう。センターの価値が落ちるということは「選抜」の価値も落ちるということだから、センターの価値は守る必要がある。となると、センターになれる実力があるのにセンターにこだわらないってひとがいると……。なるほど、生田絵梨花を外さなければならない、と。
島:そう考えると掛橋沙耶香が選抜から外れていたのは運営陣からすればやっぱり放置できない問題ですよね。「選抜」水準にあるメンバーが「選抜」よりも優先するものがあるっていう雰囲気を醸し出してしまうと、「選抜」の価値がぐんぐん下がってしまいますよね。
楠木:そうおもいます。肝心なのは、アイドル本人の思惟ではなくて、大衆のイメージですからね。

OLE:誰もがセンターを目指さなきゃいけないわけじゃない、とか、自分のイロがあればいい、とかさ、あとは、それが乃木坂らしさだ、とかさ、そういう甘っちょろい考えは物語として成立しないんだよね。賀喜遥香がね、センターは目指すべき場所、ってはっきりと言っているのを見て頼もしく感じたね。そういう意味でも「選抜」の価値を上げるのはやっぱり若手なんだよね。
島:でも生田絵梨花の魅力って鷹揚さにありますよね。それはアイドルの序列闘争を超越してしまった存在にのみ宿るものです。生田絵梨花と「センター」を論じることって彼女のレゾン・デートルをスポイルすることになりませんか。
楠木:生田絵梨花の魅力に鷹揚さがあるのは間違いないけれど、たとえば彼女がセンターをやることでそれが損なわれるのか、と考えるとそうはならないですよ。また、センターをやらないことで「生田絵梨花」が保たれる、という一方的な見方をするならば、それこそ「選抜」には必要ないですよね。だって生田絵梨花の魅力は「選抜」やセンターを拠り所にしていない、ということになるから。
横森:センターになりたいけどなれないだけかもしれない。
OLE:そう言って退けるのは簡単だよね。
楠木:センターへの「当為」の問題ですからね。この一枚の「IF」を探るとすれば、それは生田絵梨花の不在ですよね。逆にアクチュアルな問題を探るなら与田祐希かなあ。与田祐希を3列目に下げちゃうと空想のバランスが一気にくずれてしまう気がする。
OLE:人気が無視できないから?
楠木:人気というよりも情報という意味での可能性の保持ですね。現在の与田祐希が3列目に落ちるっていうのは、これはもうセンターへの可能性の剥奪を意味してしまう。でもそれは現実にそぐわないというか、情報の支えを期待できないですよね。彼女は常にセンター候補であるし、人気も文句なしで、ファンの輿望を担っている。妄想というのは、実は現実の情報を支えとしなければならないわけです。妄想を提示するとき、情報を支えにすればそこに説得力が出て価値が生まれる、と。
島:もし与田祐希が直近でセンターをやっていれば3列目も”有り”ですよね。
楠木:そのとおりです。
OLE:なるほど。
楠木:いやでも生田絵梨花降ろしはおもしろいですよ。
横森:生田絵梨花がついにアンダーか……。

「掛橋沙耶香、はやくも『福神』入り」

楠木:さいごは僕の一枚ですね。話題を引き継ぐのは卑怯だけれど、となれば当然、生田絵梨花はセンターにするしかないわけです。

(C)乃木坂46

OLE:3-5-7の15人。精鋭だね。
島:でもこれ、一番のピックアップは掛橋沙耶香になりますよね、絶対。
楠木:髪を切りましたよね、最近。バッサリと。あれを見て、この子は推せるぞ、と。髪が長くても短くてもビジュアルが輝くっていうのは、もう主人公なんですよ。
横森:親戚の子って感じ。お小遣いをあげたくなる。
OLE:ノブレス・オブリージュを刺激するんだよ。
楠木:ラテン語にクリエンテスという言葉がありますよね。塩野七生の言葉を借りると、信義にもとづく後援者、と意訳できる。アイドルとクリエンテスの関係というのは宝塚を見ればわかるように歴史があります。たとえばSKE48の成功はこの「クリエンテス」なんですね。掛橋沙耶香の魅力はファンをクリエンテスに変えてしまうところですね。
島:3枚を並べ見ると、一人だけ選ばれた、というのは清宮レイだけですね。
OLE:将来性にやや不安があるけど多様性を与えるって意味では入れておきたいよね。
横森:正直タイプじゃないかなあ。ベッキーだよね、この子。
楠木:いまいち壺にはまらない、というのがこのアイドルのひとつの読み方なんでしょうね。裏を返せば、壺にはまったときの爆発力みたいなものはあるんでしょう。
OLE:ベッキーは人気あったからね。
島:反対に、この3枚の共通点を探すと3列目の中村麗乃、2列目の久保史緒里ですかね。
OLE:そういう意味では、久保史緒里はますます生田絵梨花っぽさが出てきたね(笑)。将来的には生田絵梨花とおなじ問題を抱えるでしょ、この子は。
楠木:でも「生田絵梨花」を理想に掲げることで生田絵梨花から遠ざかっているようにも見えるんですよね。生田絵梨花というのはアイドルであると同時に役者です。しかし久保史緒里の場合、役者である前に久保史緒里なんですね。久保史緒里の演技というのはそれを眺めるとまず久保史緒里に意識が向くでしょう?
横森:それはみんな同じじゃないの、アイドルは。
楠木:いや、そんなことはないよ。生田絵梨花ってひとは一度演じた役を「アイドル」に持ち込まないでしょ。たとえば、才能のあるアイドルって演じた役を自分の作る「アイドル」の物語に持ち込むことを可能にする。ミュージックビデオとかね。才能がないアイドルはこれができない。ここがまず現代のアイドルとして人気が出るかどうかの岐路になる。でも生田絵梨花はそういうことはしない。けして役を引きずらない。しかし人気がある。つまりただ才能がある人とは一線を画しているわけだね。役者でありアイドルである、という矛盾を真っ向から引き受けている。久保史緒里に話を戻せば、彼女の場合、彼女が「役」を演じると、まずその「役」を演じた久保史緒里への称賛が降るわけです。あれこれと理由を添えて。久保史緒里が演じた「役」がなにを語ったのか、とか、どう生きたのか、ではなくて、久保史緒里がどう演じたか、どれだけ素晴らしかったのか、という話題に占められる。この点に久保史緒里と生田絵梨花のあいだに果てしなく広がる埋めることのできない隔たりを見るわけです。
OLE:そのとおりだとして、でもアイドルとして見ればこれほどおもしろい存在はいないよね。
楠木:もちろん。批評への原動力という意味では抜きん出ているように感じます。

 

2021/09/22  楠木


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