AKB48 仲谷明香 評判記

AKB48

仲谷明香(C)スクランブルエッグ

「『非選抜』のバイブルを印す」

仲谷明香、平成3年生、AKB48の第三期生。
”非選抜”を主題にした書籍の出版を見てわかるとおり、序列闘争に敗北し打ちひしがれてきた経験をそのままアイドルの集大成にして物語化を遂げた人物である。文章を書くことで「アイドル」を考え、敗北の中にも夢や希望があるのだと発想し、一時的にではあるが、ファンから、また同業者からも脚光を浴びた。
順位闘争に敗北しつづけることで、敗者がいるから勝者が生まれるのだとする希望に至りレゾンデートルを握りしめる様子などは、かなり陳腐ではあるが、陳腐であるがゆえにそれが実体験から手繰り寄せられたものであろうと確信させる点、そうすることでしか希望を見ることができないのだと屈曲する眼差しには、グループアイドルの儚さの一端がよく現れている。AKB48という、夢の騒擾(そうじょう)に立つ少女たちの屈託、感情に流されずに生きようとする多くの少女たちの屈託を晴らそうとする仲谷の言葉はきわめてリアルである。
アイドル当事者が「アイドル」を仔細に語り、多くの読者の心の内に自分の言葉を落とし込んでも、それが本人が演じるアイドルの魅力に昇華されるわけではないという事実に直面したこともまた、リアルと言うべきだろうか。社会では、敗北する人間のほうが遥かに多いはずなのに、敗者の立場から見いだす希望よりも、勝者が語る希望のほうが大衆の感情移入を誘いやすい。それはつまり「仲谷明香」はどうやっても人気者にはなれないという事態を意味するが、だからこそこの人の言葉は「非選抜」のバイブルたり得るのだ。

 

総合評価 56点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 9点 ライブ表現 13点

演劇表現 12点 バラエティ 14点

情動感染 8点

活動期間 AKB48 2006年~2013年