「楠木かなえ」が考える、平成のアイドル ベスト”選抜”

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平成年間にデビューしたアイドルを机に並べ、最高の16人を選んでみようと、また遊び心を宿した。ならば、平成のアイドルの歴史をAKB48に絡めながら叙述するべきだと考えたが、途中、書きながら、これはまたかなり退屈な文章になってしまったな、と吐息をつき、結局、手を止めてしまった。目的は、別のところにある。
AKB48ひいては乃木坂46の魅力を一言で云えば、少女ゆえの幼稚さ、つまり、少女ゆえの成長への可能性、ということになるだろう。この「幼稚さ」をアイドルシーンにはじめて落とし込んだのが宝塚少女歌劇を立ち上げた小林一三である。プールを改築した仮設のステージで踊っていた宝塚の少女たちが帝国の舞台にいよいよ立とうという日、小林は、ほんとうにこの未熟な少女たちを帝国の舞台にあげていいものなのか、逡巡した。けれど、未熟である少女だけが表現し得る輝きもあるのではないか、可能性のごときに思い至り、覚悟を決めた。この瞬間に、アイドルとは成長物語だとする今日のアイドル観の萌芽がある。アイドルが儚いのは当たり前である。成長してしまえば、その魅力のほとんどが、朝露のように全身から消えてなくなってしまうのだから。