STU48 土路生優里 評判記
「心に感じる雫は何だ?」
土路生優里、平成11年生、STU48の第一期生。
「土路生」と書いて「とろぶ」と読む。同期の今村美月と顔がよく似ていて、ファンのあいだで話題に挙がることが多々あったが、内面はそれぞれ、個性を別けている。ステージの上で活力にみなぎる今村に比して、土路生はその温和な容貌に反し、あやふやなものを思考の拠点と定めない、能動的な人物であった。「アイドル」の枠を尽くして夢に取り組む姿勢は、たとえば、渡辺麻友や島崎遥香等の流れを汲んでおり、STUのなかにあって、AKB的なアイドルを描き出している。ゆえに、アイドルがアイドルらしくメルシーに振る舞うことを許さない特異なグループへと変貌しつつあるSTUを前にして、落胆し、幻滅したという点に彼女が卒業を決心したことの核心があるとするのは、上滑りしているかに見える。たとえば、ただ同じ事を繰り返すだけの日々のなかで、昨日と違う結果がおとずれるのを願う行為ほど愚かなことはない、と云ったのはアインシュタインだが、その種の啓発的な言葉、感情が、つまり卒業をチャンスだと捉える、アイドルは夢への架け橋だとするAKB的価値観が、卒業の核心ではないか。
その土路生優里の決断力がもっともよくあらわれた作品が、充実しているように見える日々のなかでも、何かが足りない、とつぶやいてしまう人間の性(さが)を歌った『誰かといたい』であり、同作を歌い躍る土路生を眺めていると、アイドルが詩的世界に浸透し、現実世界での行動力を得ていく瞬間を目撃する。
仲間の成長を目のあたりにした際に人目を憚らず大粒の涙をこぼすなど、情感の豊かな人でもあった。
総合評価 62点
アイドルとして活力を与える人物
(評価内訳)
ビジュアル 12点 ライブ表現 12点
演劇表現 12点 バラエティ 13点
情動感染 13点
STU48 活動期間 2017年~2019年
引用:見出し 秋元康/誰かといたい
2023/04/07 編集しました(初出 2020/04/23)