STU48 森香穂 評判記
「ショールーマーの星」
森香穂、平成9年生、STU48の第一期生。
チャットレディ(ショールーマー)出身のアイドル。触れ込みどおり、SHOWROOMの申し子として、自己表現のほとんどすべてを、その空間に委ねたメンバーである。劇場を持たず、日々、スマートフォンカメラの前でファンとの交流をはかり、画面の向こう側に立つファンに評価される、支持されることでのみアイドルが養われるという、今日のSTU48の現状を眺めるに、森香穂はその草分け的存在と呼べるだろうか。森にSHOWROOMでの立ち居振る舞い、ファン交流の術を教授された同期のメンバーも多かったと聞く。
福田朱里によれば、森は「AKB48のことをあまりよく知らない少女」であったらしく、職業アイドルに憧れ、アイドルになることが大きな夢だと語る多くの少女たちとは異なる立場を得たことが、既存のアイドル観――AKB的、あるいは乃木坂的、という意味のアイドル観にもたらされる、ある種の条件――から抜け出ることを、可能にしたのかもしれない。このアイドルは、純潔でもなければ、誠実でもない。山の天気のように表情を変え、赤裸々に日常を語るその姿に、多くのファンが注目したようである。「全員選抜」をその当事者として批判したり、卒業を申し出た直後にそれを撤回してみたり、ファンの情動を揺さぶる、地熱あるエピソードを数多くもっている。
アイドルを演じる少女たちがその活動のなかで、その裏側でトラブルが起きた際には、何をおいてもまずファンにそれを伝える、涙を流し訴え出る、言わばファンに中労委の役割を求めるという、幼稚な構図が確立したのも、劇場支配人からのセクハラ被害に遭ったことを森がファンに告発した出来事に端を発する。
その意味では、なにがしかの価値、値打ちを誇るアイドルなのかもしれない。けれど、人気は最後まで出なかった。「アイドル」という言葉の成り立ちを考えれば、当然と言えば当然ではある。アイドルが、自ら神秘性を放棄、諦めてしまっては、もはや元も子もない、というだけの話である。
総合評価 45点
辛うじてアイドルになっている人物
(評価内訳)
ビジュアル 11点 ライブ表現 5点
演劇表現 3点 バラエティ 12点
情動感染 14点
STU48 活動期間 2017年~2019年