AKB48 履物と傘の物語 評判記

「履物と傘の物語」
歌詞について、
童話を、歌詞のなかに喩えとして置くのではなく、歌詞そのものを童話として描く場合、作詞家としての資質ではなく童話作家としての資質が求められてしまうのだろう。童話作家には読者の心に負荷をかけない文体と描写が求められる。平易な文章にメタファーを織り込むという作業には、作家としてたかい資質が求められる。
たとえば、童話作家から純文学作家に転身し成功を収めた小説家に江國香織がいる。童話作家出身の小説家ということで、正統な評価をうけてこなかった作家だが、その日常の濃やかさを記した小説にはたしかな魅力が備わっている。江國香織とは逆に、異なる立場から童話を試みたのが『履物と傘の物語』なのだが、残念だが、今作品からは、童話作家としての資質を見いだすことはできなかった。説明的な描写で終始するのにもかかわらず、感情の情景化が起きないのは配置されるべきギミックが欠落しているからだろう。一言で云えば、企みが浅い。映像と音楽の力を利用できる状況下にあって、一定の水準をクリアする作品に至らなかった結果は、やはり力量不足と断じるべきだろう。
総合評価 43点
何とか歌になっている作品
(評価内訳)
楽曲 9点 歌詞 9点
ボーカル 10点 ライブ・映像 9点
情動感染 6点
歌唱メンバー:柏木由紀、小嶋陽菜、指原莉乃、島崎遥香、高橋みなみ、松井珠理奈、横山由依、渡辺麻友
作詞:秋元康 作曲:片桐周太郎 編曲:片桐周太郎