乃木坂46 羽根の記憶 評判記

「風が吹き始めたら 生まれ変わる」
歌詞、楽曲について、
12thシングル『太陽ノック』のカップリング曲。センターは生駒里奈。
アイドルを演じる少女に寄り添った詩情が記されている。当然、アイドルから高い評価を受けている。この歌をベストソングに挙げるアイドルもいる。ファンからの評判も良い。やはりテーマにリアリティがあるのだろう。
アイドルが口ずさむ歌だからといって、その歌詞のすべてがアイドルに向けられたメッセージとは限らない。作詞家・秋元康の詩情とアイドルを結びつけるとき、それは大抵の場合、投影に過ぎないわけだけれど、今作品においては、日常生活者に向けた詩情と、アイドルを演じる少女へ向けたメッセージの直接的な混淆がある。
この混淆のおもしろさとは、日常生活者に向けた未来への活力と、アイドルを演じる少女の未来への活力の合致によって、職業アイドルを目指す若者の背中を押すような内容になっている点である。オーディション会場で繰り返し流されていた、というエピソードを耳にしたが、なるほどな、とおもった。要するに、アイドルの入り口と出口の両方が描かれているのだ。
今日、あらためて『羽根の記憶』を聴いてみると、アイドルへの入り口としては文句なしの楽曲に映る。ただ、出口としてはどうだろうか。時代を迎え撃つための”読み”が甘かったように見える。数字というものは詩的世界への没入を削ぐものだが、「10年後」とあえて記した作詞家の想いを穿ってみれば、現在のシーンの有り様は、なかなか皮肉な結末に映るのではないか。
ミュージックビデオについて、
ダンス=演劇、という高級感を打ち出そうとしている。これはグループがずっとやろうとしてきたこと、というよりも、実際に試みてきたことなのだが、ここにきてそのやりたかったことが簡明に伝えられるようになった、ということを証明しているようにおもう。ダンス=演劇そのものはまだまだかっこ悪いのだけれど、映像に、アイドルの表情に高級感がたしかに出てきている。
総合評価 63点
再聴に値する作品
(評価内訳)
楽曲 14点 歌詞 13点
ボーカル 8点 ライブ・映像 14点
情動感染 14点
歌唱メンバー:秋元真夏、生田絵梨花、生駒里奈、伊藤万理華、井上小百合、衛藤美彩、齋藤飛鳥、斉藤優里、桜井玲香、白石麻衣、新内眞衣、高山一実、西野七瀬、橋本奈々未、深川麻衣、星野みなみ、松村沙友理、若月佑美
作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦 編曲:杉山勝彦、有木竜郎
引用:見出し 秋元康/羽根の記憶