欅坂46 今泉佑唯 評判記

「ただひとりの聖人」
今泉佑唯、平成10年生、欅坂46の第一期生。
エモーショナルな美を備えたアイドルだと、形容すべきだろうか。
野心に嘘をつかない、闘争心を剥き出しにしたその姿は、グループの絶対的なエースである平手友梨奈のアンチテーゼと目され、平手友梨奈を主人公にしたドラマ、平手友梨奈の作り上げた音楽の世界観にのめり込むファンから小石を投げつけられる場面も多々あったようだが、そうした逆境に立たされた際に独特な美を映し出す点に、今泉佑唯の魅力がある。この人と言葉を交わすとき、それがどれだけ優しさに包んだ言葉であっても、彼女を深く傷つけてしまうかもしれない、アイドルが毀れてしまうかもしれない、という自覚に襲われる。でも、それでも彼女の”核”に触れてみたいと衝動に駆らせる、赤い非常ボタンのような、そんなアイドルを今泉佑唯は描き出している。
平手友梨奈を中軸にして回転する青春の書。そこでは、なにをするにしても平手友梨奈の働きかけがあり、だれもが皆、平手友梨奈の背中を見ている。平手友梨奈が今どこにいるのか、どこに向かって走っているのか、探っている。その光景に違和感を覚え、異を唱える者は、気でも狂ったのか、と云われてしまう。でもきっと、今泉からしてみれば、平手友梨奈を囲むその「お祭り騒ぎ」こそ、本物の「気違い沙汰」ではなかったか。こうした観点から穿てば、今泉は、欅坂46において「聖人」と呼ぶべき唯一の登場人物だと云えるかもしれない。けれども、唯一、欅坂を外から冷静に、しかし熱を込めて眺めることができた今泉の、その無垢で攻撃的な、アンビションな眼は、かねてから平手友梨奈が「アイドル」そのものに感じ取っていた倦みと、類似したものではないか。
総合評価 73点
アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物
(評価内訳)
ビジュアル 15点 ライブ表現 15点
演劇表現 14点 バラエティ 14点
情動感染 15点
欅坂46 活動期間 2015年~2018年