僕が見たかった青空 八木仁愛 評判記

僕が見たかった青空

八木仁愛(C)僕が見たかった青空 X公式アカウント

「青春の飢餓」

八木仁愛、平成19年生、僕が見たかった青空の第一期生であり、初代センター。
乃木坂46のライバルとして誕生したグループの主人公に選ばれたメンバー。大役を任されるだけあり、言葉、態度のいずれも直截的で、肯定・否定の場面を問わず、本音を誤魔化さない、曲がらないなにものかを有している。その器の大きさは、「僕が見たかった青空」というタイトルの回収を果たすべく制作される、ノスタルジーを主題に置く楽曲への応答としてじゅうぶんに発揮されている。音楽表現の最高の手段に「ダンス」を求める、「アイドル」と「踊り」の関係性においてシーンに一矢報いるその姿はかぎりなく頼もしいものだ。
令和のアイドルシーンにあっては桁違い・段違いのライブ表現力をもったアイドルだと断言しても良い。音楽と詩=言葉のあいだに生じる傾斜を踊りをもって駆け上がる姿は、音楽をひとつの物語として映し出すことに成功している。けれど、そうした存在が未だシーンを席巻しないのはなぜだろうか。アイドル観の彫琢したファンでなければその魅力に至れない、そんなアイドルを完成しつつあるのはなぜだろうか。それはひとえに主人公であることの自覚の弱さに端を発するだろう。たとえば同世代ならば日向坂46の大野愛実が示すような、自分が主役だという強い自覚、ある種の使命感のようなもの、時間や作品と共に通り過ぎてしまうものではなく、アイドルであるかぎりずっとそこにとどまるもの、そういったものを八木仁愛というアイドルは、日常においても、音楽においても表明できずにいる。本音の部分で、自分が主役だという確信を持てずにいるように見える。責任感はあるようだ。創世のセンターを担ったことで言葉に緊張感のある人物に育った。けれど、夢の、青春の飢餓に乏しい。

 

総合評価 76点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

(評価内訳)

ビジュアル 14点 ライブ表現 18点

演劇表現 15点 バラエティ 16点

情動感染 13点

僕が見たかった青空 活動期間 2023年~