僕が見たかった青空 金澤亜美 評判記

「乃木坂レトロ」
金澤亜美、平成19年生、僕が見たかった青空の第一期生であり、3代目センター。
「僕が見たかった青空」というグループ名に象徴されるように、ある種のレトロスペクティブを体現したアイドルである。その点で金澤は、言うまでもなくグループを代表するメンバーとみなせるだろう。
昭和や平成に息を吹き込むことがカルチャーになった現在のシーンにあって金澤が水際立ってレトロである所以は、ライバルグループである乃木坂46の過去にあらためて価値をつけるという、その倒錯にあるだろう。アイドルファンであれば、金澤亜美を眺めればその誰もがまず西野七瀬の横顔を想起するはずだが――たしかに、顔貌は説明するまでもなく、ふしめがちで物静かだけれど激しい感情を秘めている点、笑顔の裏に野心を潜ませることでファンの庇護欲を掻き立てる点など、そのビジュアルにおいて西野七瀬に酷似しているが――、金澤の真骨頂は、西野七瀬によく似た少女という点にあるのではなく、むしろ「西野七瀬」をいまさら持ち出すことに一体どれだけの意味があるのか、という、反時代精神への批判、呆れ、嘆きの内に見るべきであり、新しさを捨てた、また古さをもって新しさを否定するのでもない、その姿、今を生きる若者が音楽を通して過去に立つことで、もうひとつの可能性の世界、大仰に言えば、失われた未来像が描き出される点に金澤亜美の、つまりは「僕が見たかった青空」の真髄がある。過去の乃木坂にあって、現在の乃木坂にはないものを、言い換えれば、だれにも継承されることなく乃木坂46の歴史に埋もれてしまったものを、ライバルグループのセンターが懐かしさとしてあらわすことの倒錯、そうすることでしか、もはやアイドルのアイデンティティが立ち上がらないのだという点に金澤のレトロスペクティブがある。
「AKB48」や「乃木坂46」といった記号ではなく、文語、散文、詩情のひとつとして表されたグループ名への決定的な結実として西野七瀬によく似た少女がこの令和時代に『FUNKY SUMMER』を踊るそのレトロな姿は、あるいは、なにかを言ったり、書いたり、歌ったりしても、パスティッシュ、パロディーの枠組みを抜け出ることがどうしてもできない現代にあっては、もっとも希望的と言うべきかもしれない。
総合評価 81点
現代のアイドルを象徴する人物
(評価内訳)
ビジュアル 17点 ライブ表現 16点
演劇表現 17点 バラエティ 15点
情動感染 16点
僕が見たかった青空 活動期間 2023年~


