STU48 甲斐心愛評判記

「ノスタルジアの萌芽」

甲斐心愛、平成15年生、STU48の第一期生。
13歳でデビューした、1期の最年少者。「次世代」を担うべき若手メンバーとして、デビュー以来、一貫して将来を期待されてきた。甲斐に向けられる「期待」の特徴は、単に能力的な成長への期待に収まらず、自分がとうの昔に失ってしまったものを、たとえば若者としての感情の機微をアイドルとして過ごす時間のなかでこの少女はどう変貌させるのか、という好奇心にある。ゆえに、ファンよりも同業者、とくに作り手からの声価に優れる。
甲斐心愛の成長を追体験することは、そのままSTU48の歴史をなぞることになるのだという憧憬と、その事業、その共同体の立ち上げに自分が従事したことの記録、たしかに自分はあの日あの場所に立っていたのだ、という記憶を閉じ込めるための、ある種、ノスタルジアの萌芽として、この少女は役立てられているようである。
通常であれば、アイドルの世界、芸能の世界に立てば、10代の女子が当たり前にもっているはずの無邪気さ、無鉄砲さ、自由奔放さなどは、早々に鳴りを潜めてしまうものだが、甲斐心愛は一味違ったようで、アイドルとしてデビューした後も、ながらく、少女特有の性質、無垢に走った一面をファンの眼前で大胆にさらけ出している。要するに、当たり前のものが特別に映ることで、鑑賞者の内に信じるに値する価値が生まれるのである。
作り手を魅了するだけの才能・資質をそなえているのだから、当然、境遇にも恵まれている。作り手の内でグループの方針がまだまだ定まらなかった、先行きの不透明な時期に制作されたメジャーデビュー・シングル『暗闇』の歌唱メンバーに選ばれなかった悔しさを除けば、その後発売されたすべての作品において見事に表題作の歌唱メンバーに選抜され続けており、年少者ながら抜群の安定感をもったアイドルへと成長した。4枚目シングル『無謀な夢は覚めることがない』をステージの上で初披露した際の甲斐のアーティフィシャルな表情には、センターで躍る瀧野由美子、またその近傍で躍る岩田陽菜に比肩する個性が宿っている。

総合評価　59点

問題なくアイドルと呼べる人物

（評価内訳）

ビジュアル　12点　ライブ表現　13点

演劇表現　9点　バラエティ　12点

情動感染　13点

STU48 活動期間　2017年～

2023/03/30 編集しました(初出 2018/08/14)