乃木坂46 風船は生きている 評価

乃木坂46, 楽曲

(C)風船は生きているミュージックビデオ

「強くなって飛べるはず」

歌詞、楽曲、ミュージックビデオについて、

17枚目シングルのアンダー楽曲。センターポジションで踊るのは渡辺みり愛。
幻想になりきること、幻想を演りきることへの啓示が記されている。現代でアイドルを演じることになった少女たちを囲繞する情報群、つまりは通俗への覚悟要求をポップに描いている。これはアイドルの日常の再現ではなく、楽曲を演じる過程でこぼれ落ちた日常に見える。だからか、楽曲全体が瑞々しい。演劇への入れ込みや気負いが可能な限り排除されているため、仮構のなかを揺くアイドルたちが等身大に、美しい「青春」そのものに映る。たとえば、画面に映し出される佐々木琴子の形相、それが仮の姿なのかどうか、という視点で眺めてみると面白い発見があるのではないか。それはアイドルの仮装仕掛けであり、彼女は他のアイドルたちが笑顔の演技をしているなかで、独り演じることを放棄しているのかもしれない。あるいは、演技をしている演技=嘘を作っているのかもしれない。「穴開いたその箇所を頑張って塞」ごうとしない、「心開かない」アイドルを日常で演じつづける佐々木琴子がフィクションの境域では見惚れるほどに咲い、怒り、「しゃべりすぎて」いる、「楽に息を吐い」ている。だから、観者は当惑し眩暈するのだ。
『風船は生きている』以降、アンダーメンバーの多くは、映像作家の手腕にもたれ掛かる外連を脱し、拙さの露出を覚悟した演技要求と向かい合う傾向がつよくなる。また、徹底した活力を提示する姿勢の一貫さ、という意味においても『風船は生きている』を乃木坂46・アンダー楽曲の大きな転換点と捉えることが可能だろう。

センターポジションに立った渡辺みり愛が、『風船は生きている』提供後、情報=通俗の「喧し」さに遭遇したことは、喜劇的であり、なおかつ、楽曲に書かれた詩が時間を先回りし、少女を迎え撃ち、詩的責任を見事に果たしたと云えるだろう。シンクロニシティや不吉な胎動の結実という意味では『ブランコ』の不気味さに比肩しており、その後『ブランコ』、『風船は生きている』の到達点にタッチしたアンダー楽曲は存在しない。『三角の空き地』において意図的な模倣が試みられたが、期待感への無残な裏切りを披露したまま、探索行為は破棄されている。

 

総合評価 73点

現在のアイドル楽曲として優れた作品

(評価内訳)

楽曲 15点 歌詞 14点

ボーカル 15点 ライブ・映像 15点

情動感染 14点

歌唱メンバー:渡辺みり愛、伊藤かりん、伊藤純奈、川後陽菜、川村真洋、斎藤ちはる、相楽伊織、佐々木琴子、鈴木絢音、能條愛未、山崎怜奈、和田まあや

作詞:秋元康 作曲:泉佳伸、三好翔太 編曲:早川博隆、三好翔太

引用:「」秋元康 / 風船は生きている

 

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