乃木坂46 4番目の光 評判記

「4番目の光」
歌詞について、
「校歌」を意識しているのだろうか、わからないが、常にアイドルを子供扱いする作詞家が、ついに自身も幼児退行してしまったのではないか、と不安になるような詩情が記されている。あるいは、散文への恋い焦がれが強すぎるのか……。「清楚」を詠うが、”秘すれば花”もなければ、想像力もない。唐突に置かれる「万感の思い」を前に「胸に込み上げてくる」のは滑稽さ気恥ずかしさのみである。*1
幻想の矛先に選ばれ、架空の世界の扉をひらく少女たちのプロローグとして、まったく機能していない。また、アイドルが矜持を育むスタート地点に立たされていないし、ここからなにかがはじまる、という胎動も書けていない。西野七瀬と(そして、おそらくは白石麻衣と)交錯した最後の”次世代”である第四期生を、未来の子供=希望としてではなく、グループの過去の証としか捉えていない。この詩情から読めるのは、第三期生が誕生した日から、『三番目の風』を作り出したその日から今日まで、作詞家の脳内において乃木坂46というグループは一歩も前に進んでいない、という感慨である。たとえば、楽曲を演じる少女たちではなく、その仮構の中に直接立たないアイドル=過去の登場人物の想い出を抱えているファンへの過剰な配慮、あるいは粗雑な仮装があり、「光」を描いているつもりでも、ノスタルジーに浸るファンの子守唄にしかきこえない。この歌詞は前を向いているようでまったく前を見ていない。
なによりも皮肉的に感じるのは、歌詞そのものが安易な記憶を描いてしまったがために、楽曲が季節の記憶として両足で立つことを困難な状況に陥れ、酷く空疎であるという点だろう。前を向いていないし、なにがしかの記憶となるような詩情も記せていない、というわけだ。
ミュージックビデオについて、
技巧の拙さは生彩であり、瑞々しく、風になびく髪を眺めながら、ファンは共有する物語の主人公をそれぞれに発見できたのではないか。一回性の緊張、希求は避けられないだろう。
総合評価 43点
何とか歌になっている作品
(評価内訳)
楽曲 11点 歌詞 4点
ボーカル 8点 ライブ・映像 13点
情動感染 7点
引用:*1 秋元康 / 4番目の光
歌唱メンバー:田村真佑、遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香、金川紗耶、北川悠理、柴田柚菜、清宮レイ、筒井あやめ、早川聖来、矢久保美緒
作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦 編曲: 杉山勝彦、谷地学