NGT48 清司麗菜 評判記
「僕らは天使なんかじゃない」
清司麗菜、平成13年生、NGT48の第一期生。
ステージに立つと、アイドルの顔貌が一変する。デビュー当時、柏木由紀から、劇場に降り立った際の存在感に並ではないものがあると、高く評価された。そのとおり”ダンスの上手”であり、たとえば『絶望の後で』における表現力、秋元康によって詩作された「絶望」を自身の胸の内に現実にかえて手繰り寄せようとするその仕草、ディスターバンスの深さに限って云えば比肩するものがなく、まさしく逸材と呼ぶべき登場人物である。
清司の表現の内に見る可能性、そのスタイルを劇的に統括すれば、現実における出来事をフィクションのなかで再現する多くのアイドルとは異なり、現実への応答として編まれた音楽=フィクションのなかで、そのフィクションつまり秋元康の言葉を頼りにして現実を再構築するような踊り、となるだろうか。僕らは天使なんかじゃない、とアイドル自身が歌うことの倒錯、ある種のリアリティに達したのは、この清司麗菜だけである。
それゆえか、アイドルとして確かな才能・実力をもちながら、人気・知名度は極端に低い。当然だろう。アイドル=偶像と読み、アイドルを演じる少女に神秘性だとか、幻想的イメージを求めるファンにとって、ステージの上に「絶望」を呼び込める清司麗菜はアイドルにはなりえないのだから。
『絶望の後で』を歌い踊る清司麗菜を眺めれば、否応なく、ファンは「山口真帆 暴行被害事件」当時の喧騒を、より具体的な記憶をもって、それぞれが、握りしめることになる。そうした意味では、清司麗菜は、音楽よりもアイドルが優先される現在のシーンの有り様に逆らったアイドルだと呼べるかもしれない。
総合評価 72点
アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物
(評価内訳)
ビジュアル 13点 ライブ表現 17点
演劇表現 12点 バラエティ 15点
情動感染 15点
NGT48 活動期間 2015年~