NGT48 羽切瑠菜評判記

「オーセンティック・アイドル」

羽切瑠菜、平成11年生、NGT48の第二期生。
渡辺麻友に似ている。「ポスト・渡辺麻友」のカテゴリーに分類される多くの少女たちのなかでも羽切瑠菜の存在感は別格である。少女のうたかたの夢を描き出した点、荒々しさと、邪推深く憂鬱な気分を同時期にその身内に宿しているように見える点、それらモニュメンタルな横顔をあくまでも「演技」のなかで表現しているところなどが、渡辺に愛着した羽切瑠菜の独自の魅力だと、まず唱えるべきだろうか。
『今日は負けでもいい』(『短い夏の、さよなら』)の映像作品の一点においても、羽切は長い時間の経過に堪えうる可能性を刻印している。「アイドル」という夢の世界に向けた希望はもちろん、その希望の破断もまた、あらかじめ語りきっている。とりわけ伏し目がちに佇むその憂いに満ちた横顔は、鑑賞者を淡いノスタルジーへと引き込むだけの力をたしかに備えている。たとえばそれは、大人になって帰郷した際に、偶然、旧友の親族を見かけ、自転車にまたがったその少女が、学生時代の旧友そのものに錯覚されるような、ノスタルジーである。
つまりそのノスタルジーが、渡辺麻友を今日的なアイドル観――AKB48を王道とするアイドル観――にあてはめ語ることでようやく浮かび上がるポスト・渡辺麻友の少女たちとはまったく異なった場所に羽切瑠菜が立っていることを教えているのだが、当然そのノスタルジーは、アイドルになったことで心の内に秘めた大切なものを他者に明かすことがどうやってもできなくなるという渡辺的屈託へと彼女を誘導してもいる。
卒業に際し、アイドルをやりきった、とか、青春をすべて捧げた、とか、思い出を言葉で演出するアイドルは、正直、露ほども儚くない。無知にも、あるいは、無謀にも、「渡辺麻友」に囚われ、模倣しているだけにしか見えないから、なのかもしれないが、いずれにせよ渡辺麻友をして「王道のアイドル」だと呼号するのならば、やはりその条件は「泡沫」になるのだろう。羽切にはその泡沫がある。記録よりも記憶に残るような、何かが。
グループのエースである本間日陽のとなりで踊っても断じて存在感を奪われないなど、羽切瑠菜はライブパフォーマンスの面においても一頭抜く可能性を示していた。

総合評価　76点

アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物

（評価内訳）

ビジュアル　15点　ライブ表現　14点

演劇表現　17点　バラエティ　14点

情動感染　16点

NGT48　活動期間　2018年～2019年