日向坂46(けやき坂46) 齊藤京子 評判記
「自家撞着に鎖される」
齊藤京子、平成9年生、日向坂46(けやき坂46)の第一期生であり、4代目センター。
現在の、アイドル的香気に欠いた、華のない齊藤京子を眺め、メッキが剥がれてしまった、などとため息をつくのならば、それは大きな勘違いだろう。この人は生まれながらに平凡だったわけではない。デビュー当時の、欅坂46の1期生の面々に囲まれた際の彼女にはたしかに凡庸を凌ぐもの、たとえば、悠然さ、勇敢さ、ふてぶてしさがあった。ただそれが、「アイドル」として暮らす日々のなかで、グループが欅坂から日向坂へと移動する時間のなかで、朝露のように消え失せた、ただ単に、才能が枯渇したにすぎない。
生まれ持った才気を余すことなく発揮する強い登場人物に映ったメンバーが、現在は、過去とは決定的に食い違う人物に見える、という、自家撞着に齊藤京子のアイドルとしての「特筆」がある、とでも云うべきだろうか。たとえば、アイドルでありつづけることで本当の夢を見失ってしまうという泡沫をその身をもってシーンに映し出したのが柏木由紀ならば、アイドルでありつづけることで本当のしあわせを、当たり前の日常を見失ってしまうという寂寥を引き出したのが白石麻衣であり、アイドルでありつづけるために耽美を取り入れることで個性のすべてを失い平凡な人へと落ち着くという、アイドルの破綻を描き出したのが齊藤京子である。
自己の才能を伸ばすことが夢の実現につながると信じきれず、兎にも角にもアイドルとしての人気・序列を押し上げることが夢への近道であると信じて疑わず耽美に走るその行動力こそ彼女が平凡であることを裏づけているが、それだけに多くの平凡な少女たちにとって、齊藤は手の届く憧れに映るのかもしれない。
とはいえ、ヘルタースケルターになった今でも、ダンス、歌唱力のどちらも抜群に安定感があり、アイドルシーン全体を見渡せば、平均か、平均を凌ぐだけの実力を有している。なによりも、存在感、この一点においては、才能豊かな瑞々しい少女たちに一歩も引けを取らない。今後は、一線から身を引き、後陣から若手に緊張感を与えつつ、その育成に手を貸すことが、グループへの最大の貢献になるのではないか。
総合評価 54点
問題なくアイドルと呼べる人物
（評価内訳）
ビジュアル 10点 ライブ表現 12点
演劇表現 12点 バラエティ 7点
情動感染 13点
けやき坂46 活動期間 2016年～
