AKB48 大和田南那 評価

大和田南那(C) 湯浅洋/2019 Google •

「小さな軍靴」

大和田南那は現代アイドル史においてトップ3に入る逸材である。AKBグループの最盛期に収穫された寵児であり、”アイドル大和田南那誕生”の鮮烈さは、同時代に出現した小嶋真子というアイドル史に転換点を刻み込む才能すらも、脅かし、喰らってしまう勢いであった。小嶋真子が歩む深い森、その隘路への扉をひらく衝動をあたえたのは間違いなく大和田南那だろう。「いつだって追う者は追われる者に勝る」という科白があるが、大和田南那の前を走ることになったアイドルの苦悩の色は、底が見えないくらいに、濃い。しかし、グループの新生と人心を一新させる、未来と希望を背負い込んだ”若き新皇帝”に訪れた顛末は喜劇的な悲劇であった。(*1)

ティベリウスの死去とカリグラの登場を、ローマ帝国の中でもとくに本国イタリアと首都ローマの住民たちは、長く沈鬱な冬の後の春の訪れのような喜びで迎えたのである。七十七歳の老皇帝の後を継いだのは、二十四歳と七ヶ月の美しい若者。…人心の一新にも、二種類がある。危機状態からの脱出を願って求める人心の一新と、さし迫った必要はないにかかわらず、単に変化を求めるがゆえの人心の一新である。前者の場合、求める人々の気分は幸せでなく余裕もない。反対に後者の場合は、幸せだし余裕もある。カリグラの登場を迎えた人々の気分は、後者であった。

(塩野七生「ローマ人の物語・悪名高き皇帝たち」)

大和田南那という”若き新皇帝”の誕生はまさしく「さし迫った必要はないにかかわらず、単に変化を求めるがゆえの人心の一新」であり、ファンは「幸せだし余裕もあ」った。宮脇咲良の出現は、たしかに、ある種の屈辱を招いたかもしれない。しかし、グループの衰退という崩落をもちこたえようとする支柱の損壊=脅威には映らなかった。何故なら、小嶋真子、岡田奈々、西野未姫の3名が”三銃士”として、AKB48の過去の証を担う未来の子供としてすでに屹立しており、その上に大和田南那という寵児が出現し、かさなったのだから。”小さな軍靴”と呼ばれ、住民に愛された皇帝カリグラ(大和田南那)の無邪気な行動は内側でも、外側からさえも、笑って許された。「一般市民たちは、文句なく大歓迎だった。彼らの間ではいまだに根強い『ゲルマニクス神話』」=黎明期のAKB48で物語られた群像劇の再来に期待をしたのだ。他のグループから”出張”をしてきたアイドルにグループのエースの座を奪われた屈辱感を晴らす、芝居じみたエンターテイメント的な救世主の登場。AKB48の血を引くアイドルによって、大政奉還が成される光景をファンは恋い焦がれたのである。それほど大和田南那という存在に対する期待感は大きく、斜陽を予感させるグループの光であり未来であった。(*2)

しかし、外敵の恐怖もなく、内側に脅威を感じることもなく、贅の限りを尽くし、愚政と裏切りを繰り返した皇帝カリグラは祝祭の最中、昼食のために席をたち、皇宮に向かう途中、自分の身を護ってくれるはずである近衛軍団の大隊長(カリグラの父親に忠誠を誓いローマの為に戦った老兵である)に斬り殺されてしまう。国家を護るための所業であった。「カリグラと通称されたガイウス・ユリウス・カエサル・ゲルマニクスの統治は、三年と十ヶ月と六日で終わった。」大和田南那がAKB48のオーディションに合格し、卒業発表をするまでの期間は、三年と十ヶ月と十日であった。住民にとって、カリグラの死は一刻も早く忘れたい出来事であった。期待や喜びを裏切られたときの反動は凄まじい。彼らはカリグラの石像を破壊し、海へ投げ捨てた。大和田南那の卒業も、ファンにとっては、意識の外側に放り投げたい物語となった。(*3)

 

総合評価 65点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 18点 ライブ表現 13点

演劇表現 13点 バラエティ 14点

情動感染 7点

AKB48 活動期間 2013年~2017年

引用:(*1)時代は変わる Pt. 1 / THA BLUE HERB
(*2)(*3)塩野七生「ローマ人の物語・悪名高き皇帝たち」

評価点数の見方