STU48 新谷野々花 評判記
「野に咲く花」
新谷野々花、平成16年生、STU48の第一期生。
たとえば『片想いの入り口』が代表的だが、桜をアイドルに喩えて歌った同曲が成功を収めた理由には、アイドルを演じる少女の未熟さがある。ゆえに、アイドルの魅力の大部分を幼稚さに占める新谷野々花は同曲の完成に高く貢献したメンバーだと云えるだろう。特に、その歌声の独特さ、バラッドのような歌唱表現が、功を奏したかに見える。
一転、そうした未熟さが、つまり目の前で躍る少女がまぎれもなく幼稚であることが、いまひとつ、アイドルの内奥に踏み込むことを、ファンに逡巡させたようでもある。
今日のアイドルが隆盛を誇る理由の大部分に、アイドルを演じる少女の未熟さ、未熟であることで成長への予感を伝えるという幼稚な希求があることはまず間違いないが、そうした幼稚さをそのまま楽曲に落とし込むことで、傑作の誕生を叶えたと同時に、新谷は、現実へと引き戻されるファンを多く生んでしまったのかもしれない。
卒業発表の際に朗読されたメッセージは、少女にそぐわない仰々しさがあり、たとえばそこには、自分とは違う何者かが自分の意思とは無関係に「自分」として他者のなかで作り上げられていくことに向けた葛藤、しかしまたそれは自分自身にほかならないという動揺に醸し出される夢へのなごり、「文章を書いた人間」の夢への反動が込められているように感じた。この点もまた、新谷野々花というアイドルの幼稚さを映している。いずれにせよ、『片想いの入り口』のオリジナルメンバーという一点のみにおいて、長くシーンにその存在を投げかけることだろう。
総合評価 51点
問題なくアイドルと呼べる人物
(評価内訳)
ビジュアル 9点 ライブ表現 12点
演劇表現 6点 バラエティ 12点
情動感染 12点
STU48 活動期間 2017年~2020年
2023/04/06 編集しました(初出 2020/08/13)