乃木坂46 伊藤理々杏評判記

「プリミティブ・アイドル」

「星のひかりってね、私たちに届くまで何年も何万年もかかるんだって」
「そんなに？」
「今私たちが見てるのは大昔の過去の星なんだって」
「今見えてる星が過去の星なら、鏡に映る私は0.0000000001秒過去の私？」
…鏡は過去の自分。
私、…ひかりを届ける人になりたい。

松本千晶 / 鏡の中の十三才

伊藤理々杏、平成14年生、乃木坂46の第三期生。
子役出身者ということもあって、デビューほどなくして、プリミティブなアイドルとして、イメージを固めた。古く完成されたアイドル、と換言してもよい。おそらくは、乃木坂の歴史において、デビュー直後に手繰り寄せた人気のほとんどを失ってしまったメンバー、つまりは、もっとも序列を下げたメンバーがこの伊藤理々杏であり、その下落幅を前に、もはや今日では、悲痛に満ちたアイドル、というイメージすら固めつつある。
他の多くの子役出身アイドルたちと同様に、伊藤理々杏もまた、演じる行為に定跡を備えた少女であった。
その「定跡」を一言で統括すれば、自己となんら地続きにされない、自己とは無関係の他者を作り上げることが「演技」の”かなめ”であると心に固く誓う、非散文的な意識、となるだろうか。そうした少女の健気な意識、演技の特徴は、良く云えば、日常生活のなかでは絶対に出現し得ない所作、感情を描き出す劇場型の表現にあり、悪く云えば、アクションの極端な、類型的な表現、ということになるだろうか。舞台・ミュージカル、ミュージックビデオなど、「演技」の中で壺にはまった際の存在感の強さは認めてしかるべきである。
問題は、昨日まで見えていたものが見えなくなるという、成長への不安をそのままアイドルのストーリーにかえてしまった点だろうか。本来は、昨日まで見えなかったものが、すこしずつ見えるようになる、べきではないか。

総合評価　57点

問題なくアイドルと呼べる人物

（評価内訳）

ビジュアル　12点　ライブ表現　13点

演劇表現　13点　バラエティ　10点

情動感染　9点

乃木坂46　活動期間　2016年～

2021/05/25 演劇表現 12→13