乃木坂46 田村真佑 評判記

「現実の残部によって「夢」を明かす」
田村真佑、平成11年生、乃木坂46の第四期生。
ファンを引きつける部分と、アイドル本人が生まれ持つ資質――田村自身、おそらくは自覚しないであろう魅力――がこれほどまでに行き違う人物もめずらしい。ビジュアル、ライブ表現力、演技力など、表現の分野において凡庸を軽く凌ぐ才能を有した、トップアイドルである。乃木坂の歴史のなかでも屈指の実力をもつ。
才能の行き違いは、田村から放たれる親近感によるのかもしれない。彼女の「親近感」を端的に穿つならば、20歳でデビューした田村にとってアイドルを演じることは「青春」のノスタルジー化にほかならず、同期のメンバーの成長を眺めることが自己の過去に眩しい光りを当てることになるという予感にひしがれているように見えるその彼女の横顔が、アイドルが自分となんら変わらない、一般生活者の記憶をもつであろうことを無意識にも想起させる。その記憶が、誰もが現実の中で忘れていた夢を喚起させ、親近感を抱かせるのではないだろうか。
いずれにしても、これまでに多くのステージで質の高い、晴朗な踊りを披露してきた。とくに、もう一度夢を見る、という、昨日の自分と今日の自分をつなぐことで「夢」がもう一度立ち現れることを演劇とダンスの折衷によって表現しようと試みた『人は夢を二度見る』においては、高い演技力とライブ表現力をあわせもつ田村の特性が存分に活かされたかに見える。音楽の中で、カメラではとらえきることのできない美を放っている。
興味深いのは、ビジュアル、ライブ表現力、演劇表現力など、アイドルを最高度に咲かせる資質においてトップクラスの水準にありながら、そのいずれも「アイドル」の拠りどころにせず、それらを多様性つまり喜怒哀楽、とりわけ笑顔への集約に拘り抜くことで「アイドル」の自立を叶え、ファンを魅了する点である。その才能、実力、また普遍にされた魅力がデビュー時をピークとせず、日々、成長している点も目ざましい。
総合評価 73点
アイドルとして豊穣な物語を提供できる人物
(評価内訳)
ビジュアル 14点 ライブ表現 14点
演劇表現 15点 バラエティ 15点
情動感染 15点
乃木坂46 活動期間 2018年~