STU48 張織慧 評価

STU48

張織慧(C)オリコンニュース

「生まれ育った地は」

「いや、俺はイェンタウン(*1)じゃねえよ。たしかに両方の親はアメリカ人だけども、生まれたのも育ったのもここ日本よ。おまけに日本の酷い英語教育のおかげで俺は英語がまったくアイキャントスピーク状態なんだよ」
「英語喋れないんだって」
「なにオカシイかい。まあオカシイだろうな。こんな俺って日本人?アメリカ人?俺たしかにこのルックスのおかげでどこへ行っても外人扱いだよ。でも、まちがいなくこの国で生まれて、この国で育っちまったんだよ。この国しか祖国はないだろ?要は産声あげるときも死ぬときも畳の上ってことよ。あんたたちは良いよ、まだ還れる祖国があるから。いわゆるイェンタウンには故郷があるんだよ。ちなみにそこのお嬢ちゃん、生まれはどこ?中国?」
「日本」
「じゃあ君はイェンタウンか?」
「うん」
「いー、違うんだな。ディファレント、ディファレント。あんた別に日本に円を求めてやってきたわけじゃないだろ。でもあんたみたいな二世も日本人は区別してはくれないんだよ。要は彼らにしてみたらあんたもおなじイェンタウンなんだよ。でもおかしいだろ、それは」

(*1)イェンタウンとは、円を求めて日本に移住してきた外国人の総称/引用者による注釈

スワロウテイル/岩井俊二

張織慧、平成13年生、STU48の第一期生。
理性的で高貴なビジュアルの持ち主であり、15歳という年齢に反し、ファンを嫉妬でもだえさせるような仮想空間を作ったアイドル。
中国人の両親を持つが、生まれも育ちも日本という、いわゆる二世問題に直面し、日常の同調に対する葛藤を提示し、「アイドル」の問題を自分の問題とすり替えてしまうファンを多く生み出した人物でもある。
アイデンティティの追究ではなく、アイデンティティの探求を強いられる少女が、アイドルと呼ばれる偶像、つまり自分とは別の、もうひとりの自分を作り上げるとき、どのような物語が書かれるのか、どのような答えを手繰り寄せ、どのような成長を描くのか、といったアプローチの組み立てを可能とする登場人物であり、きわめて深刻で、きわめて身近な、普遍的な話題に立っている、と云える。
だが、デビューしたばかりの、アイドルをけなげに演じようとする少女に向ける”眼”としては、これはやや大仰にもおもえる。踏み込むのに躊躇する、と安易に表現することも許されない、どんなに言葉を尽くしてもわずかな心にしか伝わらない”ルーツ”に関する話題を、音楽や演劇を通じて、たとえば、「瀬戸内の声」、そこに奏でられる音や映像を頼りにアイドルの家郷の建築を想うといった姿勢には、どこか生真面目さを自覚してしまう。
事実、令和がはじまった現在、彼女の残したわずかな物語を再読した際に、張織慧のアイドルとしての物語は、その一年間の夢の暮らしのなかで描かれたどの横顔よりも、思想純度が高められたルーツの話題に独占されており、素直に「アイドル」をたのしむことがむずかしくなってしまったアイドルとファンの後姿を目撃してしまう。たとえば、ある喜劇のいち場面で、果樹園を営む老夫婦との交流を通し、アイドルの順位闘争に対する傷みを乗り越えようとする活力をカメラの前で提示するなど、白々しさを払拭するような頼もしさを彼女は描いているが、「張織慧」の性格をあらためて伝えようと考えたとき、このような場面をクローズアップする気持ちにはなれない。それはやはり、アイドル・張織慧のアイデンティティが、かけ出しの段階で二世問題そのものに定められてしまったからだろう。
もっとも残念におもうのは、日本人なのか、中国人なのか、といった問いかけをまえにしたファンは、結局、国籍といったシステムの枠組みの外に置かれた、アイドルの本質的な部分を見極めようと動き出すはずだが、そのようなフェーズがおとずれる前に、空想の世界の扉をひらき、現実の世界へとアイドルを演じる少女が帰還してしまった点だ。
卒業理由に”学業への道”を語ったものの、時を置かず、ふたたびファンの眼前に姿を現し、ファンとの交流を描いており、その点は微笑ましい。やはり、無謀な夢は覚めることがない、ということなのだろうか。

 

総合評価 45点

辛うじてアイドルになっている人物

(評価内訳)

ビジュアル 12点 ライブ表現 6点

演劇表現 6点 バラエティ 9点

情動感染 12点

STU48 活動期間 2017年~2018年

引用:見出し 瀬戸内の声/秋元康

 

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