HKT48 朝長美桜 評価

(C)朝長美桜/AKS

「夢の花園より」

郷愁を感じさせるアイドルである。”レット・イット・ビー”という姿勢、アイドルの描きかたならば、アイドル史において最高到達点である。乃木坂46の生田絵梨花も”ありのままで”を標榜し成功を収めたアイドルだが、朝長美桜の到達点には遠く及ばない。なによりも、朝長には戦略性が内在しておらず、企みという観点で”ありのままで”に対する倒錯を抱えた生田絵梨花では勝ち目がないのだ。つまり、それほどまでに朝長美桜というアイドルはピュアなのである。
デビュー段階で露出したアイドル・朝長美桜とファンが求める容姿、キャラクター、アイドル像が力強く一致するという幸運を得た人物であるが、同時に自身とその「あるべきアイドル像」とのギャップの存在に、成長と共に深くなる溝に、悶え苦む姿をみせることになった。大抵のひよっこアイドルは、この段階でドロップアウトし、ひっそりと消えていくのだが、朝長美桜はどうやらその溝を乗り越えたようである。同様の成功例として星野みなみが挙げられるだろうか。星野みなみのように困難を乗り越える過程を物語として提供できていたら、それは、アイドルとして確固たる地位の確立に大きく寄与したはずだが、朝長美桜は、その豊穣な物語を原稿用紙に書き連ねる際に、本人が本来もっていた魅力の核をどこかに忘れて置いてきてしまったようである。ある日、突然、美の追究に目覚めるアイドルは珍しい存在ではない。しかし、朝長美桜の場合、美に対する無頓着が自身の美貌を増幅させアイデンティティにすら成っていた為、耽美へと傾倒して行く姿と「私かな?」とぎこちなく無邪気に笑った頃とのギャップは、その代償は、途轍もなく大きい。果たして、今日、YouTubeでファッションについて小気味よく語り、「独りよがりな美」を提供する、朝長美桜の姿はファンにどう映っているのだろうか。愛用している化粧品の紹介直後に選挙イベントの投票方法について笑顔で案内をはじめる彼女の愛くるしさと滑稽さはどう映るのであろうか。それでもファンは従来どおり、彼女の作る夢の花園=虚構の中で微笑むのか。いずれにせよ、現在の朝長美桜がみせる「美」は、トップアイドルが抱える「美」とは異なる。アイドルの「美」とは円を描いて、くるくると飛びかう二匹のチョウチョである。

「人から見れば、それはチョウたちが演じる美しい円舞。扇子も紙吹雪もない、自然が織りなす「胡蝶の舞」。仲間どうしで仲よくじゃれあっているふうなその光景は、微笑ましくもあり、心をなごませて、楽園の夢想に導いてさえくれる。けれどもチョウたちにとっては、これはあくまで熾烈ななわばり争い。とるかとられるかの、貴重な資源の奪いあい。それが人間の目には、優美な舞姿に映る」

阿部和重「ピストルズ」

 「てんとうむChu!の世界をムチューにさせます宣言」は近年のアイドルバラエティ番組では「乃木坂ってどこ」に次ぐ物語性を持つ完成度の高さであったが、その喜劇のなかで観せた朝長美桜の魅力、美の多様さは損なわれてしまったようにおもう。フラジャイルが保存されたまま成長するはずであった、と身勝手に期待する人間の思惑を貫通するように、現代アイドルとして最高峰の笑い顔の裏に憂鬱を隠しながら、大事な何かを彼女は喪失してしまった。この逸材が「優美な舞姿」をみせることなく、羽ばたきを終えるとすれば、これ以上の不毛はない。

 

総合評価 57点

問題なくアイドルと呼べる人物

(評価内訳)

ビジュアル 14点 ライブ表現 8点

演劇表現 6点 バラエティ 14点

情動感染 15点

HKT48 活動期間 2012年~ 

評価点数の見方

HKT48