AKB48 後藤萌咲 評価

AKB48

 

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後藤萌咲 / GotoMoeさん(@moe_goto0520)がシェアした投稿

「マッカール家の人々」

収斂された、ひとつの世代を象徴するアイドルである。
後藤萌咲のような少女が「後藤萌咲」のようなアイドルへと成長したのは、時代の要請(宿命)と捉えることができる。現代のアイドルシーンが回避できなかった「馴致」の象徴的存在とも云える。

谷口めぐがAKB48にとって最後の「個性」と「主人公」であり、グループのイデオロギーをしまい込む筐体的なアイドルであるのに対し、後藤萌咲は、グループが別の世界へ冒険するためのあたらしい扉(空扉)を開くたびに、その扉の向こう側で遭遇し、獲得してきた「存在理由」の標しを(制服にバッジをつけるみたいに)刻印するための受け皿的なアイドルである。”移動”をするAKB48の映し鏡であり、時代の要請を反映していく…、その2つを止揚させたアイドルである。

あたらしい時代を生きようとするアイドルがシーンのトレンドに呼応するのは、当然の成り行きである。(特に吸収力という資質を備えたアイドルならばなおさらである)そのような時代に適合したアイドル(後藤萌咲)が時代に呼応しようとは試みないアイドル(谷口めぐ)との交錯によって、彼女(谷口めぐ)の書く物語のなかに含まれ、その”自分ではない他のだれか”が書く物語のなかに登場し、自分の物語では見せることがなかった、様々な表情を残すことになる。これは、バルザックの『人間喜劇』における登場人物の再登場、ゾラの書く『ルーゴン・マッカール家』の人々が、それぞれの小説のなかでまったく異なる表情をみせるのと似ている。そういう意味では、群像劇の再来という奇跡をグループに呼び込むのは後藤萌咲なのかもしれない。

 

「だれだって自分が自分の友だちさ」と媚びるような笑顔を見せて、フェイギンが答えた。「どこに行ったって、自分くらいいい友だちはないからね」
「時によってはそうでないこともあるぜ」といかにも世なれた大人を気どって、モリス・ボルターが答えた。「自分がいちばんの敵だという人間もあるからね」
「そんなこと考えちゃいかん」とフェイギンは云った。「自分が自分の敵になるのは、ただ自分と友だちになりすぎるからであって、自分以外の人間に気を使うからじゃないさ。なんの、なんの、そんなこと、道理としてありゃしないよ」

(ディケンズ「オリバー・ツイスト」)

後藤萌咲が、自分以外の人間が奏でる「音」を信頼する(身を委ねる)ことができずに、不信感だけではなく拒絶感さえも示してしまうのは、”自分自身がいちばんの友だち”だからである。そして、それが”つよがり”という「個性」として捉えられ、賛辞さえおくられてしまう。彼女を『そこから動けなくしている』のは、この個性への錯覚が原因だろう。

後藤萌咲は「個性」への問いが尽きないアイドルである。それは彼女から、ある種の「個性」が欠落してしまったせいだろう。だから彼女は、あたらしい時代に呼応しようとしても、あたらしいタイプのアイドルにはなれないし、イデオロギーを継承していないから、古いタイプのアイドルともよべない。彼女は、何処へも往けない浮遊感を身に纏うアイドルと云える。
例えば、後藤萌咲がファンとの交錯によって起きる情動。これは世代が異なれば、ひとつの個性、アイデンティティにさえなっていたはずだ。例えば、後藤萌咲のギリシャ彫刻を想わせる姿形、これも秋元才加がアイドルとして生きた時代ならば、秋元がそうであったように、そこに「主人公」を感じさせただろう。
共時性の閾には到達しない、再現性の範疇とよべる現象が彼女から、(彼女と同世代の、多くのアイドルから)個性を欠落させてしまった。後藤萌咲はその象徴的存在である。だから彼女は「比較」されることに飽いている。その行為自体に何らかの意味(価値)をみいだすことができないでいる。自発的能動性に対する貧弱さを彼女から感じてしまうのは、この一種のペシミズムが影響しているのだろう。

このペシミズムが、同世代のアイドルと比べ、後藤萌咲に重くのしかかるのは、彼女がセンタータイプのアイドルであること、その宿命を背負ってしまったからである。『ひと夏の出来事』において、ノスタルジックな映像世界の中で儚く舞う彼女の英姿が、自身の存在理由を満たしていくような光景(苦闘)にみえたことこそ、彼女がセンタータイプのアイドルである証だろう。もし、今後、ペシミズムがもたらす、”世代”を象徴する「憂鬱」をステージの中央で表現することが可能になれば、自己の可能性の幅を押し広げることができれば、アイドル史に銘記されるべき人物である、と評価することになるだろう。後藤萌咲とはAKB48というグループにとっての「鍵」であり、その「鍵」の合う”空扉”を探す旅こそ、現在のAKB48に提示された命題である、と考える。今後の動向に注目すべきアイドルの一人だろう。

 

総合評価 69点

アイドルとして活力を与える人物

(評価内訳)

ビジュアル 15点 ライブ表現 17点

演劇表現 10点 バラエティ 14点

情動感染 13点


AKB48 活動期間 2014年~
評価更新履歴
2018/11/9 ライブ表現 16→17 一部再批評しました

評価点数の見方